「セックスするって、こんなに幸せなことなんだね」
行為後、心から思ったことをそのまま彼に伝えた。それを聞いた彼は頭を撫でてくれた気もするし、少し髪に触っただけだったかもしれない。普段よく喋る彼なのに、何も言われなかった事は覚えている。
その夜のセックスは、彼とした「最後から2番目」のセックスとなった。
毎週金曜はサシ飲み。本当に私を好きなのか、やっぱり怖かった
初めて2人で飲んだ夜に、彼に好きだと告白された時は、速攻帰った。
アメリカ育ちで明るくて、顔も良くて、運動もできそう。困っていれば何も言わなくてもすぐ飛んでくるし、「昨日仕事大変そうだったね。お疲れ様」とお菓子の差し入れをくれる。
そんな少女漫画に出てくるような人が、私を好きになるはずがない。きっと他にも女の子がいるんだろう。
しかし、彼は私が他の女の同僚たちと過ごしている時も気にせず「桃乃~」と手をふってきて、家に帰れば毎日電話がかかってきて、毎週金曜日は飲みに誘われた。他に女の子がいたら、できなさそうだ。
だけど、本当に私を好きなのか、やっぱり怖かった。
彼は、私のことが手に入らないと思うから執着して、手に入ったらどうでも良くなってしまうんじゃないか。告白の答えは出せないまま、毎週金曜の日課となりつつあった彼とのサシ飲みで、飲み過ぎて、気づいたら彼の家で裸になっていた。
彼は気合いを入れた。私は、好きという言葉をぐっと飲み込んだ
朝、青ざめる私に、「俺たちセックスしちゃったね。付き合ってくれる?」と彼に聞かれた時、「でも、酔ってたし……」と断ってしまった。
彼は不満そうだったが、「いいよ。絶対振り向かせる」と気合いを入れていた。これでいい。彼はずっと好きでいてくれる。私は、好きという言葉をぐっと飲み込んだ。
ほとんどの金曜は飲みに行き、彼の家でセックスをし、土曜は2人でゲームをする。たまに外に遊びにも行った。
なのに「好き」だと私は言わない。不快に思う読者がいたら申し訳ない。でも、彼に好きでいてもらえるよう一生懸命考えた末の、行動だったのだ。
そして、ある夜、私の本音が出てしまった。冒頭の言葉である。
本当は「好きな人とセックスすることの幸せ」を心から感じたのだが、「好きな人」とは言えなかった。でも、多分彼は、気づいた。
その後、連絡頻度がかなり減った。もうすぐ来るクリスマスも「予定がある」と言われた。焦って早めにクリスマスプレゼントを用意して告白したら、冷めたことを理由に、フラれた。
フラれてから数日後、「最後にあなたとしたい」とお願いして、彼と最後のセックスをした。行為が終わってから涙が溢れてきたが、泣いてすがったらドン引きされると思い、「激しかったから、目からも汗が……」と必死に彼に言い訳をした。よく喋る彼なのに、やはりその時も何も言わず、目の汗を拭いてくれた。
もっと早く「好き」と言えばと、ずっと後悔していたけれど
恋愛はタイミング。もっと早く好きと言えばよかった。ずっと後悔していた。
しかし、彼と「最後から2番目」のセックスをしたあの夜から10か月ほど経った今、思う。
私が幸せを感じて思わず口にしてしまった、あの夜で彼は冷めてしまったのだろうか?それなら、早い段階で好きだと言って付き合えたとしても、続かなかっただろう。
そして、彼は私とのセフレ状態を続けることはできた。でも、それをしなかったのは、彼の誠意だったのだろう。
今まで付き合ったことのある人数は11人と言っていたが、複数の女の子と同時に付き合うような男ではなく、誠実な男だった。「あばたもえくぼ」状態かもしれないが、そう思っていたい。
告白されてからフラれるまで、約3ヶ月。電話、サシ飲み、セックス……。たった3か月で、たくさんの夜を一緒に過ごしてくれた彼の存在は、私の人生に色濃く残っている。
彼にフラれたことをきっかけに、エッセイを書くという新たな趣味を見つけた。悪いことばかりではない。
彼に伝えたい。本当は少女漫画のヒロインになりたかったけど、楽しかったよ。ありがとう。