2年前の夏、わたしは失恋をした。
彼とは違う国に住んでいたので、会うのは数ヶ月ぶりだった。夏の間はずっと一緒にいられるように彼の住む街で過ごす予定で、何日も、何週間も前から楽しみで、楽しみで、楽しみで仕方ない夏だった。
彼のことが、本当に好きだった。今まで薄っぺらい恋愛しかして来れなかったわたしが、はじめて心の底から好きだと感じた人。はじめて「愛しい」と思った人。
わたしの質問に否定も肯定もせず、彼は「出ていってほしい」と言った
今考えて見れば、怪しい素振りはたくさんあった。けれど「恋は盲目」という言葉があるように、わたしは彼の良い部分だけ見ていた。もしかしたら、無意識に嫌な部分から目を離していたのかもしれない。
心のどこかで、感じていた違和感。でも言葉に出してしまうと、まるで繊細なグラスのように少し力をいれただけで関係が壊れてしまう感じがしていた。
でもある日、わたしは勢いに任せて自分のグラスを彼にぶつけてしまったのだ。
「ほかに会っている人がいるの?」と彼に英語で聞いた。
英語では付き合っている人がいるという意味だそうで、つまり「浮気をしているの?」とほとんど同じ意味だった。
彼は表情を変えず、肯定も否定もしなかった。嘘でも否定してほしかったけれど、彼の目を見ても何も見えなかった。これまでの思い出も、信頼も、愛情も、憎しみも。
すると彼は乾いた声で「出ていってほしい」と言った。
夜の23時過ぎだった。
好きな人の裏切り、開き直り、そして非情さを知った夜
彼の住む街の土地勘はあったものの、異国の地。夜中に外に投げ出されることは避けたかったけれど、彼の意思は変わる気配がない。わたしもそんな彼に絶望し、困惑していた。
今まで一緒に過ごしてきた日々が、夜の花火のようにはじけて消えてなくなった。
その街に仲の良い友人が何人かいるのを知っているから、彼はそう突き放したのだろう。きっと彼はわざと嫌われるように、冷徹に接してくれたのだ。そう思わないとあの夜を思い出すのは、あまりにも辛すぎる。
好きな人の裏切り、開き直り、そして非情さを知った夜。
夏の間過ごす予定だった家を追い出され、わたしは友人の家に泊まった。彼女は、涙が止まらないわたしを優しく受け止めてくれた。何も言わずに、温かい腕でわたしを包み込んでくれた。一晩中泣いていたわたしのそばに寄り添ってくれた。
涙が枯れた頃、彼女はわたしを外に連れ出してくれた。まるでお日様のように優しい彼女の周りの人たちは、初対面のわたしも迎えいれ、変に気を使うことなく、楽しい時間を過ごした。
あれから2年、恋人は今もいないけど、あの夜から学んだ大切なこと
一滴もお酒を飲んでいないのに、人生でいちばん陽気になり、心の底から夏の夜をエンジョイした。
彼のことを頭の中から消し去り、ずっと臆病だった自分の殻を破るチャンスだった。
その日に出会った人と、勢いのままにセックスをした。好きだった彼の前では決してしない、自由で開放的なわたしになった。ずっと感じてはいけないと思っていた、快楽に浸った夜だった。
あの日から、もう2年も経った今のわたしには未だに恋人はいない。けれど、あの夏の夜に大切なことを2つ学んだ。
まず、シングルライフも最高に楽しいということ。
自分のやりたいことに、好きなだけ時間をかけられるし、それに対して誰からもとがめられない。自由で、気楽で、自分中心に生きられる、そんな日々も悪くない。そばに最高の女友達がいれば、なお楽しい。
2つ目に、もっと恋愛において大胆になっても良いということ。
彼のことを想い、合わせるのではなく、もっと挑戦的に、自由に、そして深く愛情を表現することは、とても楽しい。そしてわたし自身が恋愛を楽しんだほうが、彼にポジティブな気持ちを与える。
この秋は自由に、大胆に、楽しみながら恋愛がしたい。