「お金がない!」
90年代にヒットしたドラマ名が書かれた、黒地に金の文字でプリントされたTシャツを中学生の時、修学旅行で大阪に行った時に友達とお揃いで買った。
下心丸出しで買った「お金がない!」と書かれたTシャツ
道頓堀の商店街を歩いている時に、店前にあるおもしろTシャツが目に留まった。「人生5分で語れる」「I love大阪」などと書かれたTシャツが、お店の前に飾られていた。
気になって入ると、王道の黒と白に派手なピンクや緑色のTシャツがある。店内を見て周り、「お金がない!」と書かれたTシャツを広げて友達と、
「これいいじゃん、着ていたらお母さん、来月のお小遣いアップしてくれるかも」
と下心丸出しの意見を言い合い、購入した。
修学旅行のしおりに書かれている制限されたお小遣いの中から、なぜ少し高い、しかも今後家でしか着る事がないだろうTシャツを買ってしまったのか。
修学旅行が終わり家に帰った後も、大人になった今も、そんな疑問がふと浮かんでくる。
まぁ非現実な空間と学生独特のノリでつい買ってしまったのだろう。
スーツに身を包み仕事でクタクタになりながら帰宅し、とりあえず着替えだけでもと「お金がない!」Tシャツに着がえた時は、当時の事をいろいろと思い出す。
ビリケンさんに、足の裏の金色が剥げるかもと思うくらい願いをかける
大阪名物といえばたこ焼き。道頓堀でたこ焼きを食べた事。おいしかったが子ども舌の私には、普段家で食べるたこ焼きと違いが分からなかった。
ビリケンさんの足に小銭を置いて、友達と足の裏の金色の塗装が剥げるのでは……と心配になるくらい撫でまくった。私も友達も吹奏楽部所属だったから、来年も金賞をとるぞ!と意気込んだ。あとはたくさんの欲が詰まったお互いの願い事を込め、足の裏を撫でた。
だんだんとにっこりとしたのビリケンさんの笑顔が、なんて欲が多い子達だ、と呆れて笑っている様に見えてきた。
修学旅行でユニバーサルスタジオジャパンに行った時に、水のアトラクションに乗った事。スタッフの方に薦められたにも関わらず、そんなに濡れないでしょ!と友達と高を括り、いざ乗った際には水を頭から被り全身びしょ濡れになってしまった。寒い、寒いと言いながら身を縮めて、園内に置かれている暖房器具で身体を暖めた。
だが自由時間は少なく、アトラクションに乗れる時間は少ない。寒い身体にそう言い聞かせながら、次のエリアに身を寄せ合いながら向かった。
泊まったホテルでは早速、買ったお揃いの「お金がない!」Tシャツを着て、先生をを呼び止め写真を撮ってもらった。王道のピースだったり変な顔で変なポーズで撮ってもらったりした。「なんだ、その変なTシャツは!絶対に家でしか着なくなるぞ」と周りに笑われながら写真を撮った。
ヨレヨレになっても、青春時代の思い出が詰まったTシャツは可愛い
夕食も終わり、少しの自由時間は隣のクラスの好きな男の子を呼び出して、階段に腰かけ緊張しながらいろんな話をした事。「お金がない!」Tシャツを着たまま行ったため、変わったTシャツを買ったんだなと言われてしまった。
今思うと、なぜ私は好きな男の子と話すのに「お金がない!」Tシャツを着てしまったんだ。少しでも印象を強く残しておきたかったのか、かなり恥ずかしかった。
しかも季節は冬で、半袖Tシャツは寒い。だが寒いと言ったら羽織っていた学校の指定ジャージを貸してくれたから、結果オーライというやつだろう。
黒地に金色の文字でデカデカと「お金がない!」と書かれたTシャツは、あの修学旅行から10年経った今も部屋着として着ている。当時の友達とはもう連絡をとりあってない。
金色の文字は年月と、何回もした洗濯で焦げ茶色の色に変わったし、ピッチリした襟元は何回も脱衣してヨレヨレになってしまったし、丈も短くなった気がする。
捨ててしまおうかと何回も思ったが、長く着れば愛着も湧くもの。そこに青春時代の思い出がプラスされたらTシャツが可愛く見えてしまう。
それに私はスッピンで、襟元がヨレヨレの「お金がない!」Tシャツを着てダラダラしている自分が結構好きだ。