今では覚えていないあの匂い。あの先生を好きだった日々は、私を明るくしていたように思える。
私は、就職試験を目前に控える介護福祉士を目指している専門学生だ。
私には、中学生の頃、好きな先生がいた。中2の頃の担任の先生。女の先生だった。
なぜ忘れられないかというと、初めての同性を好きになった。そして、最も頼りたいと思っていた先生だったからだ。
その先生の雰囲気、人間性、そして、匂い。全てにおいて魅力を感じていた。

始まりは授業中、ふわっと漂う先生の匂いを覚えておこうと思ったこと

私が中学2年生の頃、その先生は担任だった。
思い出せば、好きになったきっかけは、初めて受けるその先生の英語の授業で、私の近くに回ってきたとき、ふわっと漂う先生の匂いに、この匂いは覚えておこうと思った。
私は、話せる友人の数より、話せる先生の数が多かったため、クラスにいるのは得意ではなかった。私は、学級委員長となったが、一緒に委員になった男子から号令をかけるとき真似されたり、嫌がらせされたりしたこともあり、その先生を頼り、相談に乗ってもらっていた。
しばらくして、私が、言葉で伝えるよりも、文章にして書いて伝える方がいいのではないかと先生が提案してくれ、交換ノートをすることになった。

しばらくして、登校中に「先生のこと好きかもしれない」と思った。
初めて抱くこの思いは、モヤモヤとなった。
しかし、そう気づいた日から、その先生が中学生活の私の中ではなくてはならない存在になった。
友人や他の先生にも、その先生が好きだと言っていた。
そのため、好きなところを見つけると、
「○○先生にこうしてもらった!!」
「○○先生好きすぎてつらい!!!」
などとも言っていた。
友達からは、「レズ?」などと言われていたけど、今では、レズと言う事は差別になることを知り、その先生の匂いも好きだとは言っていないが、匂いにも癒されていた。
アロマセラピーもあるように、当時の私はその先生の匂いをかぐことがその作用をもたらしていたのだろう。

なんとか、悩みがたくさんありつつも、そのたびに先生が救ってくれた2年生をおかげで、修了することが出来た。

卒業を間近に控えたある日、先生が返してくれた2人の交換ノート

中2の頃は、担任だったから頼れたけど、3年生になると担任が変わり、その先生は隣のクラスの担任となった。
頼れなくなり、あまり相談もしなくなったし、避けていた。
しかし、卒業を間近に控えたある日。
その先生と、廊下ですれ違うと、「ゆりかさん!」とよばれた。
なんですか?と答えると、先生が、中2の頃にしていた交換ノートを返してくれた。表紙には、メッセージカードが貼ってあった。
先生は「あなたのものだから、返すね」と言って、私は何も言葉を返すことが出来なかった。
別れた後、ふわっと香る先生の匂いにほろ苦い気持ちになったのを覚えている、

あの日、感じたほろ苦い気持ちは、忘れられない思い出となった。
先生の匂いは覚えていない。先生が好きで、先生の近くにいるのが、天国に行くように嬉しかったあの日も遠くなった。
先生は元気でいるだろうか?当時の交換ノートを見ながら、思いを馳せる。あの匂いはかわらないのだろうか?
中学生の頃より、自分に自信を持つことができ、介護福祉士を目指している。また、先生に会える日を夢見て、勉強に励む日々だ。
また、会えた時、「私、介護福祉士目指してます。私は、今自信もって生きてます!大好きです。ありがとう」と言うために。