今から三年前。高校三年生のときにはくようになった赤いスカートは、私にとって思い出の一着になった。

妹が履いていた、赤色のスカートを借りたことがすべての始まりだった

真っ赤というよりはボルドーに近い、少し深みのある赤。フレアスカートばかりはいていた私が、初めて気に入ったタイトスカートだった。
でもそれは、私が欲しがったものではなかったし、なんなら私のものですらなかった。三つ下のおしゃれな妹がはいていたそのスカートがとても大人っぽく見えて、私が妹に借りたのだった。
この一着が、私にとってこんなにも思い入れのあるものになるとはこのとき思いもしなかった。

赤いスカートを初めてはいて学校に行ったのは、肌寒くなり始めた十月のことだった。
ふくらはぎくらいの丈で、後ろにスリットが入っているそのスカートは、足首丈の靴下と合わせるととてもかわいい。その日、私がいつもより少しかわいくありたかったのは、大好きなA先生に会う日だったからだ。

A先生は、私の高校では珍しい若い女性の先生だった。
夏休みの補習で初めてA先生の授業を受け、私は先生の人柄に惹かれた。明るくて、面白くて、かわいい先生。補習を皮切りにして、私は大学入試対策のために何度もA先生のもとを訪れ、そのたびにいろんな話をした。その時間が本当に楽しくて、受験期の不安や焦りと闘う日々の中で、私にとって最大の癒しになっていた。

幸運をもたらす赤いスカート。合格発表もこのスカートを選んだ

A先生を毎日のように訪ねていた時期もあった。それでも先生は嫌な顔1つせず、毎回丁寧に私の話を聞き、適切なアドバイスをくれた。高校の先生が苦手だった私にとって、A先生は心を許せる数少ない先生の一人になった。

初めて赤いスカートをはいて学校に行った日の放課後も、私は職員室でA先生に入試の相談をしていた。いつもと違ったのは、A先生を中心に、他に二人の先生を交えて四人で話をしたことだ。その日はいつも以上に楽しい時間だったことを覚えている。

入試まで一か月を切り、面接練習が本格的に始まった。丈が長い赤いスカートは、タイツを合わせると重たい印象になり、残念な感じになった。それでも、私にはこのスカートをはきたい日があった。

その日はA先生と久しぶりに会う日であり、いろんな話ができる最後の日でもあった。初めて赤いスカートをはいた日にとても楽しい思い出ができたから、この赤いスカートは私にとって、幸運をもたらす服になっていた。
だからこの日、私は赤いスカートを選んだ。

受験期の特別な気持ちは、何度洗濯してもスカートに染み込んでいた

入試の合格発表は十二月。その日もいつもと変わらず授業があった。一刻も早く結果を知りたかった私は、大学のホームページに掲載される結果を高校で見ようと決めていた。
かなり厚いタイツと合わせる服ではないと思いつつ、この日も赤いスカートをはいていった。合格への神頼みの気持ちだった。

自分の番号を見つけたときは信じられない気持ちで、何度も自分の番号を確認した。夢か現実かわからなくなることが本当にあるのだと思った。これまでのすべてが報われた気持ちと、私のためにたくさんの時間を割いて向き合ってくださったA先生への感謝の気持ちとで、胸がいっぱいになった。
すぐにA先生に報告にいき、二人で抱き合って喜んだ。十八年の人生で、最も幸せな日だった。

去年、大学二年生の秋も、この赤いスカートを何度もはいた。受験期の苦悩や喜びが入り混じったあの特別な気持ちは、何度洗濯してもしっかりとスカートに染み込んでいた。
あまりにも私が自分のもののようにそのスカートをはくので、そのうち妹に「お姉ちゃんのクローゼットに掛けておいていいよ」と言われるようになった。
妹にとってこの赤いスカートは、たくさんある服のうちの一着なのだろう。でも、私にとってこの赤いスカートは、私の幸せの一番そばにいた、たった一つのかけがえのない宝物なのだ。