いつからだろう、私のInstagramのサジェストにメイクの投稿ばかりひしめくようになったのは。

所狭しと並ぶ口紅の全色レビュー写真、プリクラのペンのようなフォントで書かれている「毛穴撃退!」の文字、知らない誰かが早送りで化粧していく動画。あらゆる投稿が正方形できっちり並んでいるその様は、まさに情報のアイパレット。

しかもそれは、特にお金を出さなくても、いつの間にか手元に用意されているのだ。ただ、そのアイパレットは私にとって扱いにくい厄介なアイテムだ。

お気に入りのコスメを愛用していても「これでいい」と思えなくなる

その理由は、絶えず更新されるSNSのメイク情報を見ると、自分の今のメイクは大丈夫なのか常に問われているような気がするからだ。常にアップデートを強いられているような気持ちといってもいいかもしれない。

タッチアップで今までにないくらい似合って、まさに運命の出会いだ! と心ときめかせて買ったコスメを持っていても、新色新作限定色の言葉を見る度に、さらに自分に合う良いものがあるんじゃないかと、際限なく探究心を駆り立てられる。

お気に入りのコスメを愛用していても、自分なりのメイク法を身につけていても、これでいいと思えなくなる。絶えず色が変わっていく情報のアイパレットを見る度に、自分の持っているコスメにも自分のメイクにも自信がなくなっていき、買った時のときめきも薄くなっていく気がした。

コスメの華やかさとは裏腹に薄灰色に濁ってしまう心。情報に疲れ、購買意欲も関心も失い、いつのまにか半年以上新しいコスメを買わなくなっていた。

アップデートされていない私のメイク。だけど、自分にしっくりくる

使い込んだコスメで、今日も昨日と同じようなメイクをする。リップはもうパッケージのプリントが剥がれてきている。アイシャドウのパターンもせいぜい3つくらいで、マンネリしてきたと思うことも正直ある。

アップデートされていない私のメイク。だけど、鏡で自分のメイクの仕上がりを見た時に毎回言ってしまうのだ。「やっぱこれ良いわ」と。

ポーチの中のコスメたちは、買ったばかりのピカピカさはなくなってしまったけど、買ったあの日から、毎日確実に私を可愛くしてくれている。私の方も、同じコスメを使い続けるからこそ、そのコスメの生かし方がわかっていって、自分にしっくりくる、

自分好みのメイクが出来るようになった。新作情報に急かされてポーチの中を常にアップデートしなくても、出会ったあの日心ときめいたコスメたちもそれを使う私も、きっと変わらず素敵だ。

私は情報でポーチをパンパンにしたくないし、情報の厚化粧もしない

もし、今のコスメと相性が合わなくなった時は、また新しい素敵な出会いのために、ちょっとだけSNSを拝借しよう。そう思うようになった時、私は情報のアイパレットを断捨離することが出来た。

もちろん、SNSのレビューを見て買ったもので愛用の一軍コスメになっているものもあるように、誰かの情報がコスメとの縁を引き寄せてくれることもあるし、鮮やかな色が並ぶコスメ情報の画面は、キラキラしていてジュエリーボックスのようだと思わなくもない。

だけど、私は情報でコスメポーチをパンパンにしたくないし、情報で厚塗りされたメイクもしたくない。知らない誰かが勧めるコスメじゃなくて、私がときめいたコスメをこれからもポーチに入れていたいし、そんな愛おしいコスメたちと愛おしい私をつくっていきたい。