あなたはとても偉い。
今までたくさんの辛いことを乗り越えてきた。だって、もう投げ出したいと思ったこと、もう死んじゃいたいと思ったこと、もう生きていたくないと思ったこと、その全てを乗り越えて今のあなたがいるんだから。
私はずっと頑張ってきた。
現実世界の声なんて私に関係ないなんて嘘。本当はすごく気にしていた
幼稚園の頃、周りから沢山虐められていた。遊び相手はいっつも無機物だった。次第に私はものと遊ぶのが上手くなった。
小学生の頃、しっかりとものと遊ぶのが上手くなった私は、逃避の世界へ逃げ込んだ。絵本や物語や小説の世界は私に勇気と知恵を与えてくれた。
自分の知らない世界がどんどん広がった。私が異世界にのめり込むと同時に、現実の世界は私に厳しく辛く強くあたった。
「あの子はおかしい」
「この子は何か違う、普通の子じゃない」
「もっと普通の子に育って欲しかった。もっとみんなと仲良くできる子に……」
気にしなかった。気にならなかった。
だってそんなの私に関係ない。私の世界に関係ない……。
……嘘。
本当は私はすごく気にしていた。私はすごくすごく気にしていた。
だって本当はみんなと一緒に遊びたかった。友達だって欲しかった。
だけど、みんなが楽しめる話題が私には理解できなかった。ずっとずっと理解できなくて愛想笑いだけが上手くなった。私が本当に笑えるのは物語の中でだけだった。みんなが笑う事が理解できなかった。
一人で本を読んでいる時、その時がいちばん楽しかった。誰の顔色も気にしなくてよかった。だけど周りからそれは受け入れて貰えないみたいだった。
お母さんもお父さんも悩んでいた。
「どうしてあの子はあんなになっちゃったんだろう」
女と男がはっきりわけられる第二次性徴期。私にはよくわからない
中学生の頃、それは顕著に現れた。
第二次性徴期の頃、私は自分が女になることを受け入れられなかった。今まで男も女もなかったのに、男女関係なく遊んでいたはずなのに。制服で分けられて、女と男がはっきりわけられて。
私にはよくわからなかった。女の子は気軽に男の子と遊んじゃダメなんだって。男の子と女の子は「恋愛」に発展するのが「普通」なんだって。
私にはよくわからなかった。
私は相変わらず本の世界に逃げ込んだ。だって本の中では男女関係なく一緒に旅をしていたり、一緒に過ごしていたり、男女のその……関係について詳しく触れていなかったから……。
私にはよくわからなかった。
次第にみんなは私に、
「あなたは何も知らなくていいんだよ」
「あなたは純粋だから」
そんな言葉を投げかけるようになった。
もう女になったみんなは、子どものままの私なんか放っておきたいみたいだった。私を放っておいて、みんな大人になりたいようだった。
私は、わたしは、わからなかった。
女になりたいのかな。何も知らない子供でいたいのかな。知ってしまったらもう戻れないのかな。むかしむかし仲良くしてくれたあの子はもう男になってしまったのかな。私はもう、大人に、女になれないのかな。
「消えちゃえばいい」。ずっと呪いのように自分に言い聞かせてる
私ってなんなんだろう。
私は女なのかな。
私は女になりたくないな。
私は大人になりたくない。
私は子どものままでいい。
何も知りたくない。
これ以上難しいことを知ってしまうくらいなら――それなら消えてしまいたい。
わかんない。わかんないから消えてしまいたい。 全てを終わらせて何も考えなくていい場所に行きたい。
それでも私は死ぬことを許されなくて、ずっと生きてきた。
高校生になっても大学生になってもずっと生きてきた。
それでも私だって人間で、いつの間にか大人になって女になっていた。
本はもう読まなくなっていた。だって、あれは理想であって現実ではないから。どんなに焦がれたって現実になり得ないから。私はもうそれを知った大人になってしまったから。
それでも、私は生きていた。
辛かった。
大人になってしまった私は、子どもの頃の消化しきれない感情が残ったままの私は、すごく中途半端でとても曖昧であやふやでとても辛かった。
ずっと誰にも頼れなくて、頼りきれなくて、自分すらもわからなくて、ずっとずっと辛かった。
ううん。違う。
本当は今もとても辛い。今にでも消えてしまいたくなるほど本当につらい。
だってみんな幸せそうなんだもん。
みんな頑張って生きていて、辛いことがあっても頑張って生きていて、それでも私は自分のことしか考えられなくて自分の辛さにだけ目を向けていて、すごくすごく自分勝手で、そんな自分が本当に物凄く大嫌い。
「消えちゃえばいい」
ずっと呪いのように自分に言い聞かせてる。
でも、ちょっとだけ思う。許されるならここに書こうと思う。
私、実はすごく偉いんだよ。今ちゃんと生きているんだよ
私、実はすごく偉いんだよ。
だって今まで大人になる事が怖くて女になることが怖くて全部から逃げ出したくてまともに生きることすら周りから許されなくて。行動全て、「あの子はおかしい」で片付けられて。
それなのに私、今、生きてるんだよ。
お父さん、お母さん。
「あなたは何も出来ない」そう言い続けていたけど私、今ちゃんと生きているんだよ。ねぇ、私を見て。しっかり私を見て。私はアルバイトを頑張って学校に通って生きるために毎日家事をしてる。
ね、凄いでしょ。
だってどんなに辛いことがあっても、どんなに消えちゃいたいことがあっても、生きてきたんだもん。
消えたくても消えれなくて、それでも生きてきたんだもん。頑張ってきたんだもん。
それほど凄いことってないんだよ。生きて、生活して仕事をしているその事全てが凄いんだよ。
ね?そうでしょう?
だから、だからね。
本当に私は、あなたは、凄い人だよ。すごく凄く頑張ってきたんだよ。頑張りすぎたぐらい頑張ったんだよ。ありがとう。
あなたはとても強い人で、それが男か女か、子どもか大人かなんて全く関係なかったんだよ。
あなたはあなたのままで悩んだままでよかったんだよ。それがあなたにとっての正解だったんだよ。あなたのままでいてよかったんだよ。
だから、今日まで頑張って来た私は「とても偉いんだよ」。