あなたと出会ったのはいつだっただろう。
大学一年生の春、どこかの教室だっただろうか……。でも、それよりも前にあったことがあるような気がする。

初めて出会った波長の合う人。彼氏なんて作る時間も勿体ないと思った

大学生になって初めての誕生日が目前に迫った頃、5年も付き合っていた彼氏と別れた。
大好きだった彼。高校も同じにして、大学受験も支え合った。何回も喧嘩して、それでも続けてきた関係。でもその関係に終止符を打つ瞬間は、とても簡単で、呆気なかった。
私が喘息なのにこっそりタバコを吸っていた彼。もうそれからは信じることに疲れてしまった。恋愛することが怖くなってしまっていた。

時間は最高の薬だ。それからの私はただ、いつも一緒に遊ぶ仲のいい友達といることが楽しくて仕方なかった。
そんな中、久しぶりの対面授業で会った、顔見知り程度のあなたに挨拶をした。
「おはよう!そういえば、私もあのアイドルにハマったよ~!」
私の一言がきっかけで、あなたとの距離は一気に縮まった。今まで話していなかった分を取り戻すかのように……。

今思い返せば、たくさん話す機会はあったのに、なぜ仲良くなっていなかったのだろう。趣味も、好きな食べ物も、好みの服も、何もかも全て一緒なあなた。育った環境が違うのに、ここまで似ているなんて不思議だね。こんな波長が合う人に出会ったのは初めてだった。

いつだったかあなたは彼氏とのデートより、私と遊ぶ方が楽しいと言っていたね。私もそろそろ新しい恋愛に……なんて思っていたのに、いつの間にか、彼氏なんて作る時間も勿体ないと思うほど、あなたに時間を割きたくなった。

私たちは、お互いのために今そばにいる。悩んでも、あなたが必要だ

あなたが想いを伝えてくれた時、正直戸惑いもしたけれど、こんなに愛されていると実感したのは初めてだった。

同性が好きっておかしいのかな……?
ただ、誰よりもあなたのそばにいたい、笑顔にするのは私が良いって思ってしまうだけなのに。

あんなに恋愛に臆病になっていた私に、また人を愛することの素晴らしさを教えてくれたあなた。過去の苦しみがあったのは、あなたに会うためだったのではないかと思えてしまう程、私は「あなたがいる」、それだけのことで、幸せな気持ちになれた。
誰かに認めてもらいたいわけじゃない私たちは、お互いのために今そばにいる。同性婚が認められない日本、親に打ち明けられない現状、未来への確信がない不安……たくさんの悩みを抱えていても、それでもやっぱりあなたが必要。

考えすぎで泣き虫な私をいつもあなたは、優しく抱きしめて撫でてくれる。
その時ふわっと薫るあなたのいい匂い。
友達の時では近くにいても気づかなかったよ、あなたがこんなにいい匂いだなんて。
きっと柔軟剤のおかげなんかじゃない、あなたから薫る匂いだから、いい匂いなのだ。

ずっと一緒にいられなくても、きっと私はあなたの匂いを忘れられない

私は「あなたの」と付くものが好き。「あなたの匂い」「あなたのペン」「あなたの服」「あなたのコップ」……。同じ洗濯機で私の服を洗濯しても、同じ食器を使っても、やっぱり「あなたの」ものが好き。「あなたの」と付くだけで、ものすごい価値があるように感じ、全てが愛おしくなる。

不安で眠れない私をあなたが抱きしめて、あなたの匂いが包んでくれる。どんな安眠効果の音楽や、お香でも私は安心することができなかったのに、あなたの匂いだけであなたが私を愛してくれること、味方でいてくれることが伝わってくる。

これからもあなたとずっと一緒にいれるかな?
でも、私たちが望んでも周りは許してくれないかもね。
もしもの話、あなたと別れることになっても、私はあなたの匂いを忘れないよ。匂いに敏感な私にとって、あなたの匂いも私への愛情表現として受け取っているから。

あなたと恋人でいられなくても、あなたの幸せを願って身を引けるような大人なわたしにいつかならないとね。でも今はまだ学生で子供だから……もう少しだけそばにいさせて。
そうして私は今日も「あなたの」腕の中で、「あなたの」匂いに包まれながら眠りにつく……。