ある日曜日の夕方。晴れていたこの日、洗濯物を取り込むためにベランダに出た。そこで私は深呼吸をする。
大きく吸い込んだその空気から感じるのは、日曜日の夕方特有の香り。
人の流れは少なく、日が傾き、見える景色は、淡いオレンジのフィルターをかけているかのよう。そして、遊んでいた子どもたちが家路につき、それぞれの家庭が夕飯の支度を始める頃。昼間の暖かさと、夕暮れの哀愁と、家庭の日常が混ざった香りが、懐かしい気持ちを呼び起こす。
自分の特性を誇りに思えるのは、香りに小さな幸せを感じているとき
普段から、季節や日常からみる景色や香りに小さな幸せを感じる私。
人や環境から多くの刺激を受け取りやすいHSPという性格を持っているが、そのなかでも誇りに思えるものもある。それがこの感性。
春の、木々や道端の花が咲き誇ることで香る匂い。
夏の、太陽がアスファルトを照りつける猛暑の中で香る匂い。
秋の、紅葉がきれいで少し肌寒い日にそよ風から香る匂い。
冬の、分厚い雲とともに雪が降る合図として香る匂い。
週の初めの明るい太陽が、やる気とともに運んでくれる清々しい香り。
週の半ばにしとしとと降る雨と、どんよりした空気が連れてくるあの香り。
週末の数少ない休日に、解放感とともに優越感に浸る心地よい香り。
いくつになってもふとした瞬間に香る匂い。大人になって感じる幸せ
毎日を過ごしていて、ふとした瞬間に香るこれらの匂い。ランドセルを背負っていた子供の頃だけではなく、大人になって、仕事をするようになった今も感じることができる。むしろ、大人になってからのほうが幸せを感じやすくなったのではないだろうか。
その中でも特に記憶に深く残っているのが、晴れた日の夕方の、あの匂い。
記憶をたどると、ふんわりと思い出される幼少期の記憶。
週末で、お手伝いと称して洗濯物を取り込んでいた日もあった。部活動の試合の帰りで、友達と自転車を走らせているときだったこともあった。そして、友達と遠出をして、自宅の最寄り駅に降り立つ時間だったときもあった。
こうして振り返ってみると、特別な経験をしていることが多かった。だからなのだろうか。
場所も、時間も、年齢も違っていたけれど、ずっと変わることなく、いろいろな場所で、さまざまな景色や音、思い出とともに感じていた匂いだった。
変わらず香り続ける匂いは、懐かしくもあり、心がみたされる匂いだ
大人になり、住む場所が変わった。学生ではなく、社会人となった。昔よりも、行動範囲がうんと広がった。
そんな中、自宅で感じたこの匂い。
懐かしくもあり、心が満たされる匂いだった。
明日からの仕事に対して、頑張れよ、とエールを送ってくれるかのような、そんな気もした。
深呼吸をして、大きく吸い込んだ空気。
日曜日特有の気だるさと、明日への憂鬱も少しばかり感じながら、届いたエールに背中を押され、仕事の準備を始めた。
せわしなく毎日を過ごしている今だからこそ、何気ない休日の一日が特別になるのかもしれない。
非日常が日常と化した、今、この時代だからこそ、改めて感じられた匂いなのかもしれない。
子供の頃から、どんな場所でも変わらず香り続けるこの匂いが忘れられない。
そして、たまらなく幸せなのだ。