就活でやりたいことを決める必要はない。人生で1個見つかれば十分
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私は公務員だった。
今はもう休んでいる。
毎日だらだらと鬱々とした気持ちを抱えて、転職サイトを眺める日々だ。
5年前の自分は、今の自分を見てどう思うのだろう。
大学3年生春。
周りは、まだ人生の夏休みを堪能しているようで、サークルやバイトに忙しそうだった。
「あ、やっぱ稲葉も受けんのかよ」
違う学部のチャラ男に声をかけられた。
こいつも受けるのかよ……と内心ため息をつきながら答える。
「まあ、あと1年だしね」
目の前には、公務員試験講座のパンフレットがズラリ。
“独学は危ない!講座を取ろう!”
“地方公務員と国家公務員の違い”
沢山の難しそうな言葉に頭がチカチカする。
「やっぱってなによ……」
ポソりと誰にも気が付かれないようにこぼす。
公務員講座をとったのは、別に公務員になりたいからではなかった。
なにか明確な理由があった訳じゃない。
ただ、不安だった。
このキャンパスにある「人生の夏休み楽しまなきゃ損でしょ!!!!」みたいな空気に違和感を覚えていた。
あと数年で自分の進路を決めないといけない。
それなのに遊んでられるか。
だけど何を頑張ればいいか分からない。
高校までと違って、レールが用意されていない就活は途方もなかった。
だからとりあえず公務員試験講座をとった。
公務員試験は色んな科目があると聞いたから。
頑張れることを見つけて、安心した。
とりあえず、「何をしたらいいのか」問題に区切りを付けられた。
フラフラしていた気持ちが落ち着いた。
今思えば、頑張り方を完全に間違えていたと思う。
それから毎日10時間以上、勉強した。
しんどいと思うことが何度もあった。
逃げ出したいと思うことが何度もあった。
民間企業へ就職する人達は公務員組より遅く就活を始めて、公務員組より早く終わって、遊んでいる。
そんな人達を尻目にひたすら勉強。
心が折れそうだった。
それでも頑張れたのは、これだけ頑張っているんだから、きっといい就職先に出会えるという確信があったからだ。
就職して思う。
「頑張れば報われる」なんてないことに。
公務員になって、ブラック部署配属になった。人間関係もボロボロで、1年で部署の半分がいなくなった。私自身病気になり、職場で倒れた。
Instagramを開けば楽しそうな民間企業組。
就活時、
「今頑張れないなんて後悔するのに」
と内心バカにしていたかもしれない自分を呪った。
きっとあの子たちは、私みたいに自分から目をそらさなかった。
とりあえず勉強してれば安泰だと、そんな誰も言ってないことをひたすらやって、自分自身から目を逸らした私は今、苦しんでいる。
私は勉強を始める前に、もっと自分を見つめるべきだった。
自分がどういう人間で、どういうことをしたいのか。
就活とは受験じゃない。
就活は競争じゃない。
いかに自分と向き合い、自分とマッチングする場所を見つけるかだ。
今こんな偉そうなこと言ってるが、私は今仕事をしていない。
未だに分からないからだ。
自分がどういう人間か。
何がやりたいのか。
ずっとずっと学生の頃から悩んでいる気がする。
それでも見つからないんだから、こんなこと就活生がすぐに見つけることは出来ないと思う。
悩んでいた時、ある大人が教えてくれた。
「やりたいことなんてね、人生で1個見つかればいい方なんだよ。死ぬ時に、あぁ私あれ好きだったなって思えれば御の字。10年そこら生きただけでやりたいことなんて見つかるわけないだろう?」
目から鱗だった。
しがらみが溶けていく気がした。
「やりたいことをやろうって意気込むんじゃなくて、なんとなくでいいんだよ。なんとなく生きてみて違ったらやめて、そのうちこれ楽しそう~って思えることが出来たら上出来だね」
そうだ、別に就活時にやりたいことを決めないといけないなんて法律がある訳じゃない。
やりたいことがみつかるタイミング、そんなの人それぞれだ。
今私たちが生きる時代、いつだって何にだってなれる時代なんだ。
1つ深呼吸をした。
寝てばかりいたから、そろそろ髪を切りに行こう。
そしてまた私の人生を始めようか。
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