「国立大学大学院リケジョなら就活なんか余裕やろ」
よく言われた言葉だ。正直に答えよう。
「余裕なんかじゃない」
私は、大学を卒業後、大学院の道に進んだ。
人によっては、優秀だと思うだろう。
しかし、もともと理系の学部生だった私にとって、大学院に進学する進路は普通だった。
学部のみんなも大学院に進学するし、働くというイメージが自分の中で全く湧かず、勉強することを選んだ。そして、国立大学大学院リケジョという肩書きが欲しかったことも否定できない。
他学部の友達が、就活に勤しむ6月。
私は、大学院受験の勉強で忙しかった。
問題を様々な定理を用いて解いていく感覚はパズルをするのに近い。
将来のことなんてひとつも考えていないし、考えたくなかった。
自分の選んだ将来の選択に責任を持ちたくなかった。
ただ、正解のある問題を解いていたい。
とにかく自分の考えをぶつけ、やたら聞いてくる「就活モンスター」
大学院に晴れて入学することが出来たが、逃げていた問題がすぐやってくる。
就活の第一関門、インターンシップが春から始まるのだ。
入学早々、新しくできた友達と授業の話もそこそこに就活の話で持ちきりだ。
そして、就活の渦に巻き込まれていく。
その就活の渦の一番奥底にいる奴らを、私たちの間では『就活モンスター』と呼んでいた。業界問わず、就活セミナーに積極的に参加し、優良企業ほぼ全てのエントリー期日を把握は当然で、良い就活サイトや団体についてやたら詳しい。いわば、就活のカリスマだった。出来るだけ奴らとは話したくない……。
奴らは就活セミナーに参加しすぎて、自分の考えや思いをこれでもかというくらいぶつけてくる。そして、聞いてくる。
「何に興味があるの?」
「それはなんで?」
「大学院に進んだ理由は?」
「なんでそお思ったん?」
「これからどぉゆうことがしたい?」
「なんで?」
「……」
「なんで?」
「……」
「なんで?」
………
面接でもモンスターの前でも自分の考えをうまく話せずコンプレックス
一緒に食事しているだけなのに面接みたいだ。
いや、奴らが悪いわけではない。
答えられない自分に腹が立つ。情けない。
自分のしてきた行動を答えられて当然だ。自分のことなのだから。
しかし、正直、自分のやってきたことに意味を考えたことなどない。
全て「なんとなく」が答えだった。直感で生きてきたのだ。
ただ、面白そうだと思ったことをしてきた。
自分のことについてうまく話せない。
これが私の中でコンプレックスとなった。
実際、国立大学院生リケジョという肩書きのおかげなのかわからないが、書類選考は通過する。しかし、一次面接となると3分の2の確率で落とされる。
ほとんど、研究内容について質問されることなどないのだ。
就活は「自分の考えや思いを短時間でどれだけ人に伝えられるのか」、それに尽きる。
約30分間の面接3回で自分のことや人生観について伝えるには、このスキルが必要不可欠だろう。
けれど、25年間の人生そんな単純なもんじゃない!
つべこべ言わず、1回私のこと雇ってみてから判断しろ!
面接では口に出せない思いを伝わらないとわかっていながら、不甲斐ない気持ちで面接に挑む。