「出版業界で働けるなら何でもいいです!何でもやります!」
そんな私の想いは、伝えることすらできなかった。

一昨年の4月、私の就活は始まった。周りの友達に比べたら、結構早いスタートだったと思う。ずっと憧れていた業界、出版業界に挑戦するために、たくさん準備したかったのだ。

小説の編集者になりたい!出版業界に憧れ、志望理由をESに書いた

本が好きになったのは小学校4年生のとき。
私の通っていた小学校は、全校生徒が70人程度、1学年は多くて15人という、とても小さな学校だった。

そんな小さな学校なのに、だからこそなのかはわからないが、いじめがすごく多かった。
小学校4年生のとき、私もいじめの対象になってしまった。

いじめられた理由はわからない。今思えば、きっとどうでもいいことだったんだろうけど、どうでもいいことで起きてしまうのが小学生のいじめだ。
十数人しかいないクラスなんだから、いじめられたら当然誰も助けてくれない。

1人でいる自分が虚しくて、私はいつも人のいない図書室に逃げていた。図書室の先生はいつもすごく優しかったのを覚えている。
図書室で小説を読んでいるときだけは、現実の虚しさや辛さを忘れられた。小説の主人公になって、別の世界に行ってしまいたかった。
当時の私にとって、唯一の楽しみは図書室で本を読むことだったのだ。

こんな小学校の苦い思い出が私の出版業界に憧れた理由だ。
今見たら重すぎる。こんなES送られてきてもこっちが辛い。

実際に書いていた志望理由は、「小説の編集者になって、自分のように生きるのも苦しい子ども達を救える物語を広めたい」というものだ。
当時の私は、「小説の編集者になりたい!」という気持ちが強すぎた。会社にとって、私を採るメリット、私がどのように活躍できるかなど、まるでわからない。典型的なダメなESだ。

気持ちで勝てるほど甘くない。書類選考すらほとんど通らなかった

でもなぜか、なぜかこの志望動機でもいけると思っていた。
周りの就活生を見ていると、やりたいことがない、なりたい姿がない、いいところに入れればいい、というように、自分より何も定まっていない人が多すぎたのだ。

自分には本当に出版業界に行きたいという気持ちがあるし、入ったら死ぬ気で働く覚悟もある、と思っていたのである。

しかし、現実を舐めすぎていた。就活は気持ちで勝てるほど甘くない。
自分がこんなに覚悟を持っていると伝えるためには、まず書類選考を通らなければならない。私はその書類選考すらほとんど通らなかった。

大学のキャリアセンターやエージェントに見せたこともあったが、「出版とかメディア系のESって特殊だからね」と言われてしまう。
そのときに1人でも「好きな気持ちだけじゃダメだよ」と言ってくれれば、私の人生は変わっていたかも知れない。タラレバ論だけど。

就活でよく聞かれる質問「あなたが弊社でやりたいことは何ですか?」。就活は、このやりたいことを誰よりも本気で思って、そのまま伝えるだけではダメらしい。

自分がどのように御社で活躍できるから、どのように貢献できるから、こんな能力を持っているから、他の就活生よりこんなにすごい体験をしているから。
なぜこんなめんどくさい変換をしなきゃいけないんだろう。

純粋な憧れや、ワクワク。なりたい姿を叶えられる就活の実現を願う

「自分が好きなこと、ずっと憧れていた仕事をやりたい」
それが志望動機ではいけないということは、社会人になって、採用担当を体験してから初めてわかった。
会社の利益を考えたら、そのような採用は博打すぎる。やる気だけあっても能力がなきゃ困る。

でも、私は、採用担当を経験してもなお、私のように「好きなことや憧れていた職業だからやりたい」という気持ちを尊重してくれる企業がほとんどないことに対して、言葉に表せないようなモヤモヤした気持ちになる。

就活生の純粋な憧れや、ワクワクを潰さないような就活が実現するのはいつだろうか。
私はいつか、そんな就活生みんながなりたい姿を叶えられる就活が実現することを願っている。