6年前の夏、大学2年生だった私は念願の韓国留学へ旅立った。
中学生の頃から日本とは異なる海外の文化や生活に魅力を感じ、絶対に海外留学したい、と考えていた。

期待に胸を膨らませ韓国へ。しかし帰りたい気持ちは募るばかりだった

そんな私が留学先に選んだのが韓国だった。
もともとK-POPや韓国ドラマに興味があり、大学では英語に加えて韓国語を学んでいた。
そして大学2年生の夏、ついに長年の夢が叶って韓国へ留学に行くことになった。

留学したら、いろんな国の友達をたくさん作って毎日楽しく過ごすんだ、と思っていた。
韓国語だけでなく英語も使ってコミュニケーションを取りながら、飲み会をしたり、アルバイトをしたり、韓国内の旅行や文化体験もしてみたいなと思っていた。

期待に胸を膨らませ韓国へ渡った私だったが、実際は思い描いたように上手くはいかなかった。

誰一人知っている人のいない土地で、しかも言葉が伝わらない土地で、たった1人で過ごすのは想像していた以上に寂しく、私にとって難しいことだった。
日本にいる家族や友達に会いたくて、帰りたくて仕方がなかった。

念願の海外生活なのに、せっかく韓国にいるのに、授業が終わるとすぐ寮へ帰って、部屋でひたすら日本のアニメを見て過ごした。
毎日泣きながら家族や友達と電話をし、帰りたい気持ちは募るばかりだった。

キラキラした「ちほさん」との出会い。彼女のように素敵になりたい

そんなある日、友達の紹介で日本人の「ちほさん」と出会った。
ちほさんは、私よりも数カ月前に韓国留学をスタートさせた、私より3歳くらい年上のお姉さんだった。

同じ寮に住んでいたためよく見かけていた彼女の印象は、いつも友達に囲まれていて、オシャレで明るいお姉さん、キラキラした人、だった。
まさに私が思い描いた通りの留学生活を送っている彼女に出会って、私は私がどんな人間になりたかったのか思い出した。彼女のような素敵な人になりたいと思った。

それまで毎日くよくよ泣きながら生活していた私だったが、なりたい自分になるために、ちょっとポジティブになってみようと思った。
そして憧れのちほさんに連絡をしてみた。「海外の文化体験ができるイベントに一緒に行きませんか」と。
ちほさんは快くOKしてくれ、それを機にとても仲良くなった。

その後も一緒にカフェに行ったり、ミュージカルを見に行ったりした。
彼女の友達の友達とまで輪が広がり、韓国の高校の日本語の授業にゲスト講師として参加するという貴重な経験までさせてもらった。

また、寮に引きこもるのを止め、一人でも周辺を散策したり、留学生向けのイベントに参加してみたりと、以前より行動範囲がぐんと広くなった。
相変わらず日本が恋しくて、家族や友達に会いたい気持ちはもちろんあったが、韓国での生活を前向きに考えられるようになった。
それまでの私には考えられないくらいの、大きな変化だった。

以前とは明らかに違う前向きな私を見て、寮でのルームメイトは「あなたみたいになりたい、あなたみたいな行動的な人になりたい」と言ってくれた。
私はとても驚いた。

彼女もいつも楽しそうに過ごしていたし、私から見ると十分アクティブな子だった。
私は私でちほさんに憧れていたが、ルームメイトはルームメイトで私のようになりたいと思っていた。
「憧れ」って繋がっていく、回り回るものなのだと感じた。

憧れるだけでは何も変わらない。選択や行動が私を成長させてくれた

憧れだった、ちほさん。
彼女との出会いがきっかけで、私はなりたい自分に近づけた。
韓国へ留学するという選択をしたことでちほさんという素敵な人に出会い、現状を変えるために勇気を出して自分から彼女に連絡を取った。

ただ思い描くだけ、憧れるだけでは、私の生活は何も変わらなかったと思う。
あの時の選択や勇気を出した行動が私を成長させてくれた。

私に大きな影響を与えてくれた彼女のように、今度は私が。
誰かに影響を与えられるような、誰かが憧れるような、そんな素敵な人になりたいと思う。