自分の想いに気付いていたのに。好きな気持ちを言えないまま、伝えられないまま、会えなくなってしまった人がいます。

今までたくさんの恋愛ソングや友達の恋愛話をもうたくさん!って言いたくなるほど、聞いてきた。相手を目の前にすると、自分が自分でなくなってしまうような、違和感とも言い難い、あの不思議な感覚。
本音を言えば、大好きな人に大好きだって言えたら、それだけで私は充分なのに。

どこからともなくやってきて、気付いた時には恋に落ちている

そういえば、このエッセイを書き出してみて、いつかのバレンタインデーの日を思い出した。もちろん、自分で作ったチョコだから、自分の手で、直接顔を見て渡したかった。
だけど仕事の始業時間の関係で、どうしても渡せなかったことがある。結局この日は、共通の知り合いの人を通して、渡してもらいました。その日のうちに、好きな人から「ありがとう!」と連絡をもらうことができて、頑張って作ってよかったなと思いました。
いつだって恋は無責任だと私は思う。どこからともなくやってきて、気付いた時には、もう遅い。いや、遅いは言い過ぎかな。
遅いなんてことはないのかもしれないけど、ふとした瞬間に、好きな人の仕草や後ろ姿、いつもかけてくれていた言葉のその意味や、いつも見ていた姿と違う格好を見た時。これが恋だったんだと気付かされて。
そう好きな人を思い出すときは、いつだって自分1人の時だ。いつも見ていた景色に好きな人の姿が見えないだけで、物足りないだけでなく、目の前に見えていた世界が、ひっくり返ったような気にさえなってしまう。

時間が経つほど孤独になって、いつも好きな人のことを考えてしまう

出会った頃は、好きな人の視界の中に入れれば、それだけで充分幸せを感じていたはずなのに、時間が経てば経つほど、孤独になって、何をしていても好きな人のことを考えてしまっている自分がいて。
だけどそんな時に限って楽しかった思い出も、失敗したなってことも、一気にフラッシュバックする。こんなにも近くにいるのに、思いが届かない距離にいて。思いの丈をものさしで測ろうとしても、測れるはずなんてないのに。

デザイナーになりたくて学校に行き始めたけど、通い始めた当初は不安しかなかった。
だけど今は、自分のためだけに叶えたい夢じゃなくなって、自分のためにも、好きな人のためにも、こんなちっぽけな自分を応援してくれる人のためにも、実現させたい夢になった。
責任転嫁みたいに、ただ頑張れって言われるのは今でも嫌いだけど、好きな人がくれた「大丈夫」の言葉のその大きさに、その心強さに、離れてみて初めて気付かされました。

言えなかったけど、好きな人のおかげで自分のことが大好きになれた

渡せなかった手紙。渡せなかった想い。渡せなかった言葉。
そこには、重ねてきた時間もあって。どれだけ時間が経っても、色褪せることのない思い出の中に私はずっといたい。
好きな人のおかげで、今は今までで1番と言っても過言ではないくらいに、自分のことが大好きになりました。過去の自分が、今の自分を見たら、びっくりするんだろうな。
どれだけ見慣れた街でもその姿、形は変わってしまうけど、好きな人への想いはひとつにまとまらない。

だけど、どれだけ経ってもいつも私の側にあるから。交わした約束を果たすために、また会える日を信じてたい。
そしてまた会えた時には、あの時離れた春からの続きじゃなく、迷い込んだ真っ暗闇のトンネルの向こうに見つけた光のように。
形のあるものだけが、美しいだけじゃない。色のあるものだけが、はっきりとしているように思うけど、白と黒のモノクロだって、その凛とした儚さを持っていて。
好きな人の傍にいられるだけがすべてじゃない。
言葉だって景色だってその輪郭をなぞれないけど、思い出も記憶も点と点を繋げて振り返ったら、気付かないうちに線になっているように。
欲求だって、永遠だっていつだってここにあるわけじゃない。
好きな人を好きだと言える世界線で生きていたい。

私にとって好きな人が憧れであるように、好きな人にとって私が憧れの人でありたい。だって好きな人の代わりは、誰もいないから。