お久しぶりです、元気にしていますか?
高校を卒業してそろそろ3回目の冬がやってきますね。

私はあの頃、冬が苦手でした。
寒さで心も体も思うように動かなくて、気持ちに勢いがつかなくて、あなたに声をかけるのにも勇気が必要な私を、冬は一段と寂しい思いにさせていたように思います。

逆に、夏はとても好きな季節でした。
初夏の朝、開けた窓の外から風で運ばれてくる新緑と露の香りに、毎年胸を躍らせていました。
その香りが、私の好きな体育祭が近づいてることを、知らせるものだったからです。

14歳の体育祭の日、あなたに恋をし、ずっと目で追っていました

14歳の体育祭の日、私はあなたに恋をしました。
砂埃が舞うグラウンドの隅、鼻の奥をツンとさすカビのにおいが漂う、あの体育倉庫で。
ゴールデンウィーク明けでほんのりと焼けた肌が、普段は見られないTシャツ姿が、埃に咳き込む私を心配してくれた表情が、あまりにまぶしく見えてしまったんです。

それから毎年、初夏の訪れに気づくたびに、体育祭で見られるあなたの姿を楽しみにしていました。
陽炎が立つ地面に、まぶしそうな顔で座る姿も、少年のように無邪気にグラウンドを駆ける姿も、この視線に気づかれてはいけない……と思いながらも、あなたのことを目で追っていました。
もっと色んな姿を見たかったです。
そうですね、居酒屋で気持ちよく酔っ払って、楽しそうに笑う姿が一番見たかったなあ。

そういえば、この間誕生日でしたよね。
おめでとうございました。
好きになったその年から、あなたの誕生月の10月が近づくと、なにをプレゼントしようかあれこれ調べて、友だちに相談して、あちこち連れ回してちょっと怒られたりして。
そんな時間も嫌いじゃなかったんです。
この気持ちを伝えられない私は、「お誕生日おめでとう」といってプレゼントを渡すことで、「今年も変わらず好きです」と伝えていたんですよ。
あなたの前にプレゼントを出して、恥ずかしくて今にも逃げ出しそうな私に、いつもじゃ敬語なんか使わないのに、「ありがとうございます」と照れくさそうに言ってむけてくれる笑顔が大好きでした。

ずっと好きでしたよ、先生。私の青春のそばにいてくれて、ありがとう

14歳から7年間、ずっと好きでしたよ、先生。

新年度がはじまって、今年の担任は誰だろうと思いながら桜の絨毯が敷かれた通学路を歩く春の朝も。
流れる汗を抑えて、部活だの委員会だのと、やたら口実をつくって毎日学校に行った夏休みも。
段々と冷えていく外気に寂しさを覚えながら、修学旅行の引率に行ってしまったあなたを思って月を見上げた秋の夜も。
東京で大雪を観測した翌日、あなたと同級生のように、筋肉痛になるまで雪合戦をしたあの冬の昼休みも。
全部全部忘れられない大事な思い出で、どの季節の、どの瞬間にも、あなたの姿があって。
この7年間、あなたを思わなかった日はなかったのだと実感します。
きっとこれからも、季節が移ろうたびに、一度はあなたのことを思い出してしまう。
そんな私のことをどうか許してください。

いつか、いつか居酒屋でお酒を酌み交わして、思う存分思い出話をして、その別れ際、きっと私は「大好きでした」って伝えるんで、その時はまた「ありがとうございます」って照れた笑顔を見せてくださいね。

先生、私の青春のそばにいてくれて、ありがとう。
私にとって「先生」は、今までも、これからも、あなただけです。