15年前、初めて心からこの人のためならどんなことでもしたい、と思える人に出会えた。まだLINEなんてものは存在していなくて、学校から帰ったらメールでのやり取りをしていた。たわいもないことを夜中まで話して、寝不足でもそれがなんだか心地よくて、とにかく楽しかった。
当時はまだ恋だの愛だの、そんな理想とするような関係ではなかった。当然、想像するような淡い青春の1ページでもない。なぜなら私たちはお互いを憎いと思うほどの大きな喧嘩をしたことから始まっているからだ。

私たちは勉強に集中しなければならないのに、携帯を手放さずにいた

責任感の塊のような私とは対照的で、正しいと思うことを素直に認められない多感な時期の彼と正面からぶつかってしまった。それから、私たちは顔を合わせることなく時間だけが過ぎていった。
しかし、クラスの中にそんな奴がいることこそが不快だと感じた私は、あえて歩み寄ってみようと思うようになった。「むかつく!」とダイレクトに言葉を発したあとに、「アドレス教えなよ!」とかなり上から目線でものを言っていた。
彼はこの前後の言葉が真逆すぎて、理解が追いついていないようだったが、勢いに押されてアドレスを書いて渡してくれた。この日を境に、私たちは今まで以上にお互いのことをよく知るようになった。
彼には、一途に想い続ける幼馴染がいた。でもその幼馴染は、学年の中でもトップを争うほど人気のある子だった。彼はいつも影から見守っている存在だった。
そんなに想いがあるのなら伝えればいいじゃないかという言葉を、何万回伝えたのか覚えていない。それでも彼はずっと想いを抱きながら、大きなアクションを起こすことはなかった。
受験生だった私たちは、勉強に集中しなければならないのに、ひたすら携帯を手放さず、何かある度に理由をつけて話をしていた。
きっと卒業したら、この関係は終わる。お互いそう思っていたから、その瞬間も大切にしたかった。

彼の好きな人の名前を教えてくれたけど、私は本心を伝えられなかった

ある日彼から、好きな子が変わったと突然連絡が来た。
「ありえない!」。あんなにあの子のことを想い続けているのだから、変わるわけがないと思った。教えてくれるのかと思ったら、新しい好きな子は教えてもらえないまま時が過ぎた。
受験が近づくある日、「好きな子の名前教えるわ!」と連絡が来た。誰々?とワクワクする私に、メールをスクロールし終わった先には私の名前が書いてあった。え? と戸惑い、なんて返信したらいいかわからなかった。
その時の私は、彼の言葉を素直に受け入れることができず、考えれば考えるほどわからなくなった。そして、どうせ卒業したら会えなくなるということが先行してしまい、結果的に「このままがいい」と冷たく返信をしてしまったのだ。

卒業してお互い別々になり、しばらく連絡は取り合わなかった。大学生になり、仲の良かったグループで集まるようになった。そして、彼に会うたびに私はあの時のあの返信を、今になって後悔していることに気づいてしまったのだ。
何度もみんなで集まるのだが、後悔していることも自分の本当の気持ちも伝えることが出来なかった。大切な仲間と、心から笑い合えるこの関係を壊したくなかったからだ。

どうしても彼が頭から離れなくて、最後に素直な気持ちを手紙に書いた

それから15年、私は何度も私たちはそういう関係ではないと呪文のように唱え、お互い違うパートナーをつくり、見て見ぬふりをしていた。
私は海外で仕事をすることをきっかけに、日本で後悔していることを全て片付ける作業をした。仕事、友人、プライベート、全てにおいてやり残したことはないと思った。

しかし、どうしても彼が頭から離れなかった。このままでいいに決まっていると蓋をすればするほど溢れそうになる。だからもう二度とこんな思いはしないように、ぶつかってみることにした。
うまく言葉にする自信がなかった。だから、最後に手紙を書いて、彼のところへ向かった。たわいもない話をし、無邪気な彼の顔を見たら、あの時と同じように「このままがいい」と感じてしまった。結局、いつまで経っても、私たちの歯車は噛み合うことはなかった。
手紙には「出会ってくれてありがとう」と感謝の気持ちと、15年前伝えたかった本当の気持ちを記していたのだった。いつまでも海の向こうから幸せを願っている。