これから話すことは変なことで、話半分で読んで欲しいです。
私が高校生のとき、小学校からの同級生の男の子に告白されて記憶を失いました。
誰も、私さえも。自分の気持ちを理解はできなかったと思う
最初に思い出したのは、優等生の女の子と言い争っている自分の声と彼女の声とで、それらが脳裏にジーンと浮かんできました。
どこからから話を聞きつけた彼女は、私と男の子(仮にAくんとします)の仲介役として申し出てくれたのですが、当時の私には私の心の領域を踏み荒らされているようで不快でした。
誰かと付き合う。それがまだ分からない歳でした。マンガのようなチューをするの?その先も?
知識はあれど、美化された理想ばかりで欲望ではなかったのです。
友達は守ってくれました。先生に相談しましたが、「付き合えばいいじゃないか。青春の一部だよ」と言うだけで、私の気持ちを理解してくれませんでした。
というか、当時、誰も私さえも自分の気持ちを理解はできなかったと思います。
先生は激昂。早く解放されたくて、私は先生の言いなりになった
そのうちに、事態は悪化し、ある男子学生が「僕は君の気持ちがなんとなく分かるよ」と参入。クラスメイトは三角関係の行き先を好奇の眼差しで見守っているのがヒシヒシ伝わってきて、その肌の感覚が嫌でたまりませんでした。人の目って針なんだ、と思いました。
泥沼化していく教室の薄暗さが、私には気持ちの悪い不快な黒い煙に思えて、息苦しかったです。
結局、先生を巻き込んでクラス会を開くことになり、Aくんが折れて私が振った形になりました。Aくんは泣いていました。
私はこの取り返しのつかない状況を丸く収めるには、自分が折れればよかったのではないかとずっとぐるぐると考えていました。
そうしていたら、先生に呼ばれました。
寒い廊下の机と椅子。そこで、先生は激昂しました。
「どうして付き合ってやらなかったんだ」
机を拳で叩く音が、耳を突き刺しました。
私の気持ちはどうなるのかと尋ねると、お前の気持ちはどうでもいいと一蹴されました。ドンドンドンドンドン、と叩く机の音がうるさくて、早く解放されたくて、私は先生の言いなりになりました。
家に帰って、次に目が覚めたときにはすっかり忘れていた
青ざめた顔で教室に戻った私を友達は心配してくれましたが、もはや話す気力はなく、そのまま自転車をかっ飛ばして帰りました。家に着いたとき、頭が痛くて痛くて、眠りこけ、次に目が覚めたときにはすっかりそのことを忘れました。
告白されたことも、全部。
女の子と言い争ったこと。
別の男の子が参入したこと。
クラスメイトが好奇の眼差しで見守っていたこと。
先生に怒られたこと。
なにより、Aくんが泣いて教室を出ていってしまったことも。
それら全部を思い出したとき、頭痛と震えと吐き気が止まりませんでした。思い出すのに、5年の月日が経っていました。
どこまでが本当でどこまでが作り話か自分では分かりません。もしかしたら全部、私の幻なのかもしれません。
もし、本当のことだとしても、当時の同級生や先生を批判したいわけじゃありません。
記録として残しておきたかった。
そして、Aくんに謝りたい。5年かかったけど、伝えたいことがあるのです。
「恋かどうかは分からないけど、あなたは大事な人」だと。