こんにちは。2010~13年頃、そちらのコンビニに通っていた学生です。
朝は昼ご飯、夕方は部活帰りの腹ごしらえを買いに行っていました。
私はただコンビニに寄るだけという気分だったのですが、いつしかこのコンビニ通うことだけは特別でした。

「いってらっしゃい」「お疲れ様」を言ってくれた貴方に感じた優しさ

朝、いつものように昼ご飯を買いにコンビニに寄りました。
大体はミートソーススパゲッティとお菓子のフィナンシェ。たまに奮発して紙パックの紅茶を選びます。
レジに持って行き、片耳では音楽を聴いていた私は、いつもの流れ作業のように商品を受家取ろうとしました。その時、「いってらっしゃい」と言ってくださったのが貴方です。

この挨拶がいつから言われたのかうろ覚えですが、毎朝言われるようになりました。
私はいつも決まった時間に来るせいか、覚えてくださったのでしょうか。
始めの頃はあまり反応できず、会釈のみで過ごしてしまって申し訳ございません。

しばらく日々が過ぎ、私は挨拶してくれる貴方を認知し始めました。朝寄る時には「あの人いるかな……」と探すまでになりました。意図的に選ぶことはありませんでしたが、レジ担当が貴方だった時は「いってらっしゃい」を言ってもらえるので嬉しかったです。

貴方の手に触れる時があると、いつもその温かさに優しさを感じました。台風で電車が止まりそうな日も、雪で凍えそうな日も。

いつしか夕方には「お疲れ様」と言ってくださるようになりました。部活でヘロヘロだった私も、その時だけは微笑んでピザまんやフライドチキンを受け取りました。貴方から受け取った時はニコニコしながら帰ったのを今でも思い出します。

当時の私に言ってやりたい。もっと貴方と日常的な会話がしたかった

「お箸いる?」と、いつの間にか打ち解けた言葉で会話をするようになりましたね。といっても、コンビニの店員とお客の学生という関係の話しかしたことはありませんでした。
今思えば、もう少し日常的な会話を持ち出せばよかったと後悔しています。当時の私に言ってやりたいですね。もっと天気の話や季節の話をしろとか。

貴方に会うのはほぼ日常と化していました。朝の「いってらっしゃい」、夕方の「お疲れ様」は私にとって学生生活の一部でした。
しかし、ある日から私は来なくなったと思います。特に病気やら引っ越しやらではありません。本当に突然行かなくなったのです。
たまたま親に余裕が出来て、弁当を作ってくれるようになったからかなとは思います。部活も運動部をやめ、文化部に入ったので帰りにお腹を空かせることがなくなったのです。

結局、高校生の後半は全くそちらのコンビニに寄らなくなってしまいました。私としてはその時は気にしていませんでした。大学受験や卒業という言葉で忙しくなり、余裕がなかったのだと思います。

卒業ムードで思い出した貴方とコンビニ。小走りで向かったあの日

月日はあっという間に過ぎ、高校三年生の卒業の日になりました。
卒業ムードの中、私は学生時代を振り返りました。友人と過ごした日々、学生生活……と思い出した時、貴方とコンビニを思い出しました。
私は胸に刺さる思いをしました。「なんで思い出さなかったのか」と。

私は卒業式後の卒業パーティを終えた後、急いで帰路に着きました。電車に揺られ、日が沈んだ星空を見ながら私は卒業証書を強く握っていました。「今日はいるかな」と淡い希望を抱えていたあの時、とっても長く電車に乗っていた気がします。

最寄り駅に着き、小走りでコンビニに向かいました。夜でも中が見えるほど明るいコンビニを前に、私は足が止まりました。「もう、だいぶ前にここに通わなくなったんだ」と。
レジに貴方の影は見えませんでした。上がる息のままコンビニに入るも、店員は一人だけでした。

その晩、シフトが違うだけだったかもしてないと考えましたが、貴方はいませんでした。貴方はバイトとは違う制服を着ていたので、たぶん本社の方だったのでしょうか。異動したのだろうと私は思いました。それかお辞めになったのか。
今でも何度か寄る時はありますが、貴方には出会えていないのできっとこれからも会えないのでしょう。
あの最寄りのコンビニに入るとき、今でも期待してしまいます。

一日の始まりと終わりが良いものだったのは、貴方の挨拶のおかげ

なので、万が一、会えた時の言葉を述べておきます。
貴方がかけてくれた挨拶は、学生時代を思い出すと鮮やかに蘇ります。
お忙しいはずなのに、私に挨拶してくれる時は笑顔であったのがとても嬉しかったです。
一日の始まりが楽しく思えたのも、一日の終わりが良かったものだと思えたのも、貴方のおかげです。
名前も知らない貴方ですが、貴方の顔と声は今でも覚えています。
人生の思い出を彩っています。ありがとうございます。