母へ
お元気ですか？私はなんとか生きています。近況報告でもしようと思い、手紙を出そうとしていたのですが、なかなか時間を作れず今に至ります。
でも最近電話もしたし、LINEもしているので私がどういう状況なのかなんてわざわざ文字に起こさずとも分かるでしょう。
それでもここで、わざわざ文章を書くのは、私があなたに直接伝えることが恥ずかしいからです。

母と何度も衝突した日々。実家を出ることが嬉しくて仕方なかった

私は今、あなたがいることのありがたさを感じています。実家を出る前、何度もあなたと衝突し、酷い言葉を浴びせてしまいました。
「こんな家、出ていってやる」
「こんな不味い飯食えるか」
「私の事はほっといてくれ」
何度もあなたを悲しませました。何度もあなたの涙を見ました。それでも衝突する日々が続きましたね。
衝突が何度も重なり、就職先の条件として私は「実家から出ること」を第一に決めました。無事に就職先が決まり、実家からかなり離れた場所への異動が命じられました。
私は嬉しくて嬉しくて、やっとこの地獄のような日々から抜け出せると引越しの日を心待ちにしていました。

当日、空港で家族は私の友人と共に見送ってくれました。父と友人の姿は直ぐに見つけることができ、ずっと手を振ってくれていました。
しかし、あなたの姿を私は見つけることが出来ませんでした。何度見渡してもあなただけ見つけられないのです。諦めて保安検査場のゲートをくぐろうとした時、人混みから顔を出したあなたを私は見つけることが出来ました。

うつ病は悪化するばかり。求めていた自由が手に入ったはずなのに

その瞬間、今まで過ごした日々が一瞬で脳内を駆け巡りました。何気ない日常から些細なことでの喧嘩、一緒に出かけた思い出……全てが走馬灯のように思い出され、涙が一気に溢れだしました。
心待ちにしていた一人暮らし、新しい場所での生活、そんなものどうでも良くなりました。
その日からもう3年が経ちます。以前の私は誰にも邪魔されない「自由」な生活を望んでいました。好きなように生きるということを。

私は今、人間として生きているのか分からないくらい落ちぶれました。食事もろくにとらず、私利私欲のために生活し、学生時代から患っていたうつ病は悪化する一方です。
部屋は物置のようになり、休日はずっとベッドの中にこもり、平日が来る恐怖に怯えて過ごしています。
求めていた「自由」が手に入ったはずなのに、こんなはずじゃなかったと。それと同時に、あなたの存在のありがたみを感じることが増えてきました。

母は私のわがままに付き合ってくれていた。失ってわかったありがたみ

辛いことがあれば顔を見ただけで気づいてくれて、心配してくれること。体調が悪い時は栄養の取れる食事や看病をしてくれたこと。私のわがままに付き合ってくれたこと。
人間とは非常に都合の良い生き物ですね。失ってわかるありがたみを噛み締めています。
今さらこんな事言うのはお門違いだと分かっています。
でもあなたに言わせてください。あなたが今まで私にしてくれたこと、叱ってくれたこと、全てに感謝しています。本当にありがとう。

年末は仕事で帰れそうにないけれど、落ち着いたら顔を出しに行きます。それでは、季節の変わり目ですので体調には気をつけてすごしてください。
私より