大好きな彼に別れを告げた。理由は? と聞かれても困ってしまう。単なる勘違いだ、勢いだ。

いつも一緒にいた彼に浮気されて、罵倒された。でも、私は愛していた

彼とは配属先の縁もゆかりもない地で出会った。友達も家族もいない環境で、お互いの寂しさを埋めるようにほとんど全ての時間を一緒に過ごした。
自然と同棲を始め、一緒にご飯をつくったり、深夜にコンビニに行ったり、何気ない日常が楽しかった。旅行もたくさんしたし、毎晩愛し合った。
しかし、その関係は長くは続かない。だんだんと不安定なものになっていった。私たちは一緒にいすぎたのだろうか。彼は窮屈に感じたのだろうか。

私は浮気された。喧嘩するたび罵倒された。旅行もドタキャンされた。貸したお金は返ってこない。そんなことが続いた。
でもそれ以上に、一緒にいる時間が幸せだった。「好きだよ」「会いたいよ」そんな言葉が全てを帳消しにする。彼が触れると嫌なことは忘れてしまう。
周りは「やめろ」と言うけれど、私はどうしても離れられなかった。中毒状態だ。だから全てを飲み込んで、受け入れた。そのはずだった。

彼の家で身に覚えのないコンドームを見てしまった。3枚入りの箱で、残りは1枚。頭が真っ白になった。また裏切られたのだろうかと。
ベットに横たわる二日酔いの彼をすかさず彼を問い詰める。
「これなに……どういうこと……?」
「……べつに」
「あぁ、人間は変わらないんだね。もう一度信じようとした私がバカだった」
「……」
「すでに次の子がいるなんて、なんで気がつけなかったんだろう。振られるの待ってたんでしょ」
「なんでそう……」
「私たちはもう終わりだね。話し合うことなんてないよね」
全てを飲み込んで、受け入れていたはずなのに……失望・後悔・醜さ、そんな感情が溢れて止まらなかった。彼の言葉に聞く耳も持たず、一方的に感情をぶつけた。
家を飛び出た。私の継ぎ接ぎだらけの心は、もう限界だったのかもしれない。

浮気の真相はわからないけど、何をされても「私は彼が大好き」なんだ

後になって、友達が置いていったものと知らされた。それが本当かわからない。でも、私は信じてしまう。余裕のなかった自分を後悔する、責める。何をされても大好きなのだ。何があっても彼の言葉を信じてしまうのだ。
勘違いで、私は別れをつげた。ここまでたくさん我慢をしたのに、何と呆気ない終わり方だろう。
でも、もう後戻りできない。彼への依存を、こんな恋愛を、断ち切るきっかけだったと言い聞かせる。
愛することとは何か、結婚とは何か、幸せな結婚の条件は何か、そんな本を読み漁る。薬物のような彼はどれだけ本を読んでも、いいパートナーに該当しない。
これでよかったのだ。私は正しい決断をしたのだ。そう言い聞かせる。そう言い聞かせながら涙を拭う。

振った時は怒りや悲しみでいっぱいだったのに、彼への想いが溢れる

ああ、パフェ食べに行く約束も、彼の得意先のお弁当屋さんを巡る約束も、市民プールに行く約束も、もう無効なのだろうか。「浮気の償いも、ドタキャンの埋め合わせも、絶対にするよ」と言ってくれた言葉は、もう無効なのだろうか。
どんなに言い聞かせても彼への想いが溢れてくる。別れを告げた時はあんなに怒りや悲しみでいっぱいだったのに、恋とは不思議なものだ。

次うまくいくように、悲しい思いをしなくて済むように反省しよう。たくさん泣いてこの恋を成仏させよう。
私は幸せになるよ。新しい出会いを信じて。