私の初恋は親友だった。親友だった子に恋をした。
あの時は恋を自覚していなかったけれど、大人になった今だからこそ分かる、あれは恋だったと。

転校初日に声をかけてくれた女の子と仲良くなり、気が付けば親友に

小学2年生の頃、私は転校してきた。
愛知県のど田舎から小都会の千葉県へと。
それまでの私は超が付く程の内気で、母親の元を片時も離れない典型的な人見知りだった。
夏休み明けの最初の日、緊張でカチコチに固まっていると担任の先生から呼ばれ、教室に入り、簡単に挨拶を済ませた。
クラスの視線が自分に集まっているのが分かった。案内された自分の席に着くと隣の席の女の子が明るく声をかけてくれた。

それだけで、緊張していた心が少し柔らかくなった気がした。
それから、転校初日にいきなり遊びに誘われ、あれよあれよという間にプールに一緒に行くことになり、家に帰って速攻遊びに出掛け母親を驚かせた。
そのまま自然と仲良くなっていった私達は、奇跡的に小学6年生の卒業まで同じクラスが続き、気が付けば親友になっていた。
何をするにも一緒、休みの日も遊びに出掛けたり校外学習や修学旅行の班も同じにして、親友と過ごす時間が、学校生活で一番多かった。
周りからみても文句なしの仲良し二人組で、いつまでもそうするものだと信じていた。

持ち前の明るさでモテる親友。恋愛の相談を受けるたび苦痛だった

関係性が変わりだしたのは、中学校に上がってから。
クラスが離れたことをきっかけに少しずつ少しずつ距離が出来たことからだった。
はじめは、親友が同じクラスの男の子から告白されたと相談を受けた時。
頭を殴られたようなショックが襲ってきて、目の前が真っ暗になるような衝動を覚えている。
必死で平静を装って、当たり障りのないアドバイスをして何とか自分の家に帰った。
その日の夜は中々寝付けず、二人が付き合ったらどうしよう、とか色々なことを考えて落ち込んでいた。
結局、その時の子とは付き合わなかったみたいだったが、親友は持ち前の明るさと可愛さで自然と人気が出て、モテていたので、1ヶ月の間に告白される回数もそれは多くなっていった。
そのうち、気まぐれで付き合ってみては別れを何回か繰り返すようになり、その度に相談に乗ることが苦痛でしょうがないようになっていった。

ある時、私と同じクラスのリーダー格の女の子が片想いしていた人が、私の親友のことを好きになったらしく、それはそれは揉めていた。
喧嘩のようではあったが、何せ告白されだだけの親友は一方的に悪口を言われるだけで、見ていられないくらい可哀想な状況だった。巻き込まれただけなのは分かっていた。
それでも私は、親友側にはつかなかった。
加担するわけではなかったが、見て見ぬふりを貫いた。それだけで答えは十分だった。親友のショックを受けた顔が痛いほどよく分かった。
そこから私達は関わることを避け、高校進学で別々になってから現在までも一切顔を合わせていない。

恋というには華々しくなく、依存に近い感情で嫉妬した。ただそれだけ

恋というにはあまりにも華々しくなく、依存にも近い感情だったのだ。それを私は薄々自覚していた。嫉妬していた。ただそれだけのこと。
親友が誰かに取られることも気に喰わず、かといって自分の気持ちを伝える勇気もなく感情だけが昂って悶々としていたあの日々。
あの時もし気持ちを伝えていたら、親友は何と言っただろうか。気持ちを受け入れてくれたか、同性だからと突き放されていただろうか。
どちらにせよ、私はそんなことはしなかったけれど。否、出来なかったけれども。

もしもこの気持ちを昇華することができるとしたらそれは、あと何年も何十年も経って、親友と何かで再会でもしたら叶うかもしれない。
それまでは、この気持ちは自分の中でのみ隠し持って置きたい、真っ黒な思いで箱のようなもの。
一生誰にも言えないまま、恋だったかも曖昧だが着いてくる縛りの存在。