あなたへ

私はあなたに謝らなければいけないこと、告白しなければいけないことが1つずつあります。

あなたがくれた「好き」の、10分の1でさえも返せず、ごめんなさい

まず謝らなければいけないこと。あなたのことを好きになれなくてごめんなさい。
あなたは夏、深夜の課題通話で「誰でもいいから彼氏が欲しい……」とうわ言のようにつぶやく私に告白してくれましたね。私はその場の雰囲気とあなたとの関係を壊さないことだけを考えて、好きでもない、好きになれもしないのにあなたからの告白を受け入れてしまいました。
付き合ってからあなたは水族館に連れて行ってくれたり、私の手料理を美味しそうに食べてくれたり、「内緒だよ」と言って隠れ家のようなオシャレなカフェを教えてくれたり、沢山のものを私に与えてくれました。

私はそれが痛くて痛くてたまりませんでした。
「世界一幸せ」とでも言いたげな笑顔で私の隣に立たれると、照れくさそうに「かわいいね」と言ってくれるあなたを見ると、手を繋いだ時、緊張で少し震えたあなたの手のその体温を感じると、幸せではなく、罪の意識が先にきてしまいました。あなたがくれた「好き」の、その10分の1でさえも私は返すことができませんでした。あなたに対する負い目ばかりが募っていき、気づけばわがままひとつ、嫉妬ひとつもしないつまらない彼女になってしまいました。

結局私はひと月程で耐えきれなくなりあなたを振りましたね。その時あなたに「麻衣は多分俺の事好きじゃないやろ?」と言われてようやく私は取り返しのつかないことをしたことに気づきました。
誠意のないことをしてあなたを深く傷つけてしまって本当にごめんなさい。

絶対に私の弱さを許さないで。そうしないと私は繰り返してしまうから

次に言わなければいけないこと。私はレズビアンです。女性以外を好きになることはありません。
あなたは今「なぜ言ってくれなかったのか」と悲しい顔をしているのかもしれません。「散々彼氏欲しいとか言っとったやんか!」と大阪人らしくキレのいいツッコミをしてくれるのかもしれません。

でも、私は周りにずっと否定され続けてきちゃったんです。母親には困った顔で話をかわされました。好きになってしまった子にはには「気のせいじゃない?」と言われました。男友達とは縁が切れました。私はこれ以上否定されることが怖くて怖くてしょうがない。これはひとえに私の弱さです。あなたにとってはこんなもの言い訳にしか聞こえないでしょう。でも、私が今示せる最大限の誠意として、ここに告白したいと思います。

最後に。ここまで私の懺悔を読んでくれてありがとう。沢山傷つけてしまってごめんなさい。
あなたは優しい人だから、困ったように笑って許してくれるのでしょう。でも、絶対に私の弱さを許さないでください。ここであなたが私を許してしまったら、きっと私は同じことを繰り返してしまいます。私が今後強くあるために、私に惚れた弱みで、どうか私の初めてのわがままを聞いてください。
長くなりましたが、これで終わりです。願わくば、告白されたあの日に戻れますように。