「学生時代もっと勉強しておけばよかった」
「普通科じゃなくて、工業とか商業とか仕事につながる学校に行っておけばよかった」
「また大学時代に戻りたいな」
「子どもの頃からは楽しかったな。あの頃に戻りたいなぁ」
多くの人が、あの頃に戻りたい、やり直したいという感情を持っている。
私も、その1人だった。

あの頃に戻って声をかけてあげたいと思ったけど、実際の気持ちは…

小学生までは友人が多く、楽しい生活を送っていた。中学受験を機に友人はいっきに減った。
公立小学校から私立の中学校では、雰囲気が全く違い、通う生徒は皆お嬢様ばかり。周りの子たちのお小遣いは3000~5000円。私はテストで100点で100円生活だったため、ほとんどお金はなかった。そのこともあり、一緒に遊びにいくことも躊躇し、次第に孤立していった。

孤立することが当たり前になり、一匹狼であることが普通になった。
そして、人との付き合い方までよくわからなくなってしまった。

そのため、あの頃に戻って声をかけてあげたい。
どうやって人と付き合っていくべきか、どんなふうに関わりを持っていくか、アドバイスして、やり直したいと感じていた。
しかし、ふりかえってみると、戻ってやり直したいとはそれほど思っていないことに気がついた。

戻りたい、やり直したいという感情は、あの頃の自分、精一杯生きてきた過去の自分を否定してしまうように感じたからだ。いや、過去の自分だけではない。今の自分も否定しているように感じたからだ。
私は昔から精一杯生きてきた。

自分を否定することは謙虚なことでもなければ、美徳でもない

場面場面で、うまくいかなかったこと、傷ついたこと、たくさんあった。怠けたこともあったし、驚くくらい遠回りしてしまったこともあった。
でも、それはそれ。そういう経験があったから今の自分がある。今の自分が形成されていくことに過去の自分が必要だった。
うまくいかなかったことも、傷ついたことも、怠けたことも遠回りしたことも、辛くて悲しい思いをしたことも、全部全部私を作り上げてきたもの。

自分で自分を否定することは簡単だ。
誰かに慰めてほしいと助けを乞うことも。
でも、肯定するのは難しい。

日本人は謙虚さが美徳だと考えている人が多い。私もそういう面も必要だと考えている。でも履き違えている人がいる。
自分を否定することが謙虚であると。
自分を否定して、「そんなことないですよ!」ということが美徳だと思っている。

でもそれはただ、自分を下に見て、満足しているだけ。自分はそれほどできないからと予防線をはるだけ。
肯定することを傲慢だと思っている人がいる。
それも違う。

自分を肯定することで豊かになる心。あの日に戻らなくても大丈夫だ

自分を肯定することは、偉そうに発言するわけではない。
自分が頑張ったこと、自分がやってきたことを自分で認めてあげられることができる方が、ずっと心が豊かになる。きっと、他の人のところも肯定的に見れるようになると思う。
私は自分を肯定することで、心が豊かになり、より良い人生を歩めると考えている。

あの時に戻れたら、あの時あぁしていれば……。
たしかにそんな風に感じてしまうこともある。
やらなかったこと、できなかったことに後悔してしまうこともある。
でも、きっとそういった経験があったから今どう生きていくのか向き合えるのではないだろうか。
だから、戻りたいと考えている人も、きっと今、その後悔がないように、しっかり生きているんだと思う。

私は、あの日に戻らなくても大丈夫。あの頃に戻らなくても大丈夫。私が歩んできた道を肯定し、これからもっと心豊かな人生にしてみせるから。