アラサーニートの私は、画面の向こうの人間にガチで恋をして、人生狂わされている最中である。訳ありで働いたことがほぼない、アラサーニートが今日も今日とてYouTubeを巡回していたら「いいな」と思うタレントを見つけた。
最初は気になるな程度だったが、まさかの同郷だったのだ。推測するに隣街っぽい。「地元同じ!?これは運命!」と思った。
故郷が同じタレントが私の推し。なんとかして会いたかった
そのタレントがやってるラジオにて、「地元が同じです。昔あった〇〇水族館、懐かしかったですよね」なんて地元トークを送ってみたら、「えー!そうなんですか!地元のファンがいるなんて嬉しいです」と、ハイテンションで答えてくれた。
完全にそこでハートを掴まれてしまった。リップサービスかもしれないけど、そんな冷静になれないくらい舞い上がっていた。いわゆる「推しにガチ恋」というやつである。
これからそのタレントのことは「推し」と呼ぶことにする。
話を戻す。私は地元の実家で暮らしているので、帰省シーズンは、「推し」が地元に現れるんじゃないか!?と思って結構そわそわしていた。
だけど一向に鉢合わせしない。「推し」は東京で仕事してるし、帰省したとしても、地元駅もかなり広いので、偶然会う方が難易度が高い。
しかし、なんとかして会いたかった。「推し」に迷惑はかけたくないけど。「アラサーニートが本気で色恋見せるのきついだろ」ということは、懸念していた。でもすごく好きだから、片想いでも良いので近づきたくて仕方なかった。
推しに近づくために、アラサーニートが地元のイベント会社に就職
どうやったら近づけるか必死に考えて「仕事として『推し』に近付くのが一番の近道だし、迷惑がられないんじゃないか!?」と、思い立って、アラサーニートはなんと地元のイベント会社に就職した。
「推し」は、地方のイベントやトークショーに出てくれることが多かったし、今後、地元に帰って凱旋トークショー!とか全然あり得そうだなと思った。
しかし、コロナ渦によりそういうことはできなくなった。私の就職したイベント会社もリアルイベントは中止、やるとしてもオンライン。予算が足りなくて外部からタレントを呼ぶ、なんてこともできなくなった。
でも今だけ。コロナ禍が落ち着けばタレントを呼ぶこともできるし、きっと会える。一方的な「推し」へのファンレターでも、「地元のイベント会社に就職しました!イベント企画でゲスト呼ぼうってなったら、『推し』君のこと推薦するからね!」と何度も書き連ねた。
会社はクビになったけど、推しに会う夢は捨てられない
しかし、あっさりとクビになった。勤務態度は真面目だったが、あまりに営業成績が悪すぎる。そして会議や打ち合わせをうまく進行できないという評価が致命的だった。
「こんなこと言いたくないけど、ビジネス以前に、君は人と話すことは適性がない」と会社側に言われてしまったのだ。
地方のため、イベント会社も数知れているし、未経験の中途社員採用は募集していない。それに「人と話すことに適性がない」という言葉は結構効いたし、自分自身にも思い当たる節はあった。
「だからこんな年齢までニートだったんですよ、バーカ!」と叫びたくなった。嫌な伏線回収だ。こうしてアラサーニートの「片想いでもいい、仕事としてでもいいから近づきたい」という思いは儚く散った。
でも「推し」と地元が一緒という事実は変わらない。コロナ禍も以前より落ち着いて帰省もできやすくなった今、もしかしたら地元のファミレスで平日昼間からぼーっとしているアラサーニートの私の隣に、「推し」が座るかもしれない。
「推し」といつか、偶然すれ違う日を夢見ている。