私の手の親指は、変な形をしている。
マムシ指(短指症)といって、親指が極端に太く爪の形が横に広い。1万人に1人の確率でいるらしく遺伝性みたいだが、身内で同じ親指の形をしている人はいなかった。

幼い頃から、みんなと違う親指にコンプレックスを抱いていた

親指が短い事で、楽器が扱いづらかったり、片手でのスマホが操作しづらいという事はあるが、生活に支障がある程ではない。
ただ、見た目が歪のため人に注目される事がある。仕事中にペンを扱っている時。正面に座っていた人に親指をジッと見られた事がある。それが苦痛だった。
幼い頃から、みんなと違う親指にコンプレックスを抱いていた。見られたくないが故に、いつの間にか親指だけを隠すようになっていた。昔付き合っていた恋人に「なんで隠すの?」と無理矢理、手を差し出させようとされた事もあったが、それも頑なに拒んだ。
手術して形を変えられるなら、そうしたい。
自分の親指がとにかく嫌だった。

私の親指を愛でる女性。肩の重みがスッと抜けるようにどこか心地よい

マムシ指についてネットで調べた時、芸能人にも意外と多くいる事を知った。他にも、同じマムシ指の人のブログも読んだ。
「自分と同じ事で悩んでいる人が他にもいるんだ」と知る事ができた時は、心が少し救われた瞬間でもあった。
悩んでいる人の中には、爪を伸ばして親指を長く見せたり、爪のケアを頑張って形を変えようと努力している人もいた。
以前、働いていた職場の看護師さんと食事に行く機会があった。
そのお店には看護師さんと知り合いの女性が働いており、その女性が私の親指を見た瞬間、「マムシちゃんだ~!」と、私の両手を手に取り、愛おしそうに私の親指を撫でていた。こんな事は初めてで驚きはあったものの、相手の言葉から嫌味を感じたり、小馬鹿にされている様子もない。肩の重みがスッと抜けるような、どこか心地よいものを感じた。

たしかに、ネットで調べている時に他の人のマムシ指を見て、「変な形だなあ~」と思う事はなく、むしろ可愛いらしさを感じる事もあった。

見て見ぬ振りをして嫌いだった親指を、好きになるためにケアを開始

コンプレックスを見て見ぬ振りをして放ったらかしにしていると、その部分をどんどん嫌いになってしまう。
少しずつでいいから自分の親指を好きになろう。まずはハンドクリームやオイルで保湿ケアをするようになった。すると、何もケアをされずに荒れていた指先も、だんだんと綺麗になっていくのが分かり、とても嬉しくなった。
マムシ指だからという理由で、今までネイルをしてこなかった。親指が変な形をしているから、ネイルをしてしまったら余計に目立ってしまうのが嫌だったし怖かった。
指先が綺麗な人や、彩りのあるネイルを楽しんでいる人を見ると、素敵だなと思う。ネイルをしている人に羨ましさを感じていた。
悩んでいるだけじゃなくて、思い切ってペディキュアを買おうと決意した。

ネイル、どのブランドのものを買おうかな。
どの色にしようか悩むな?
トップコートと、ベースコートの違いってこうだったのか。
狙ってたブランドのネイル、最近ネイルセットっていうのが出たんだ。私にピッタリじゃん。

そんな今では、色とりどりのペディキュアに心をときめかせ、指先に色を乗せて楽しんでいる自分がいる。