「あんたなんか、産まなきゃよかった」
ドラマに出てくるよなようなこのセリフ。お母さんはあの時、私にどんな気持ちで言ったのだろう。後悔、憎しみ、それとも愛情?
私はお母さんにこう言われた時、おもわず笑ってしまった。本当にこんなセリフを言う人がいるんだって。
お母さんとの思い出は、辛く、痛く、冷たい思い出と、幸せで、楽しく、温かい思い出とが交錯する。今もなお身体に残る傷を見ると、心がざわつく。
一人暮らしをして2年。私は、パニック障害になった。お母さんと野球観戦に行った日、初めて発作が起きた。
突然死ぬかもしれないという恐怖に襲われ、過呼吸になっている私を見たお母さんの目は、冷たかった。その目を見て、あぁ、そうだ、お母さんはそういう人だった、と思い出した。
私はただ、「大丈夫、そばにいるから大丈夫よ」という優しい言葉が欲しかっただけなのに。
それさえ叶わなかった事で、やっと気付いた。もう何も求めてはいけないと。求めると辛くなるのは自分だと。時々、鮮明に思い出してしまう辛い過去から距離を置く為にも、私は自分の人生を生きようと思った。
もう嘘をつかなくていい。もう怯えなくていい。私は必ず強くなる。いつか、「産んでよかった」と思わせる為に。