生理前にパニックを起こすと、私はまるでモンスターのように感情がコントロールできなくなる。発達障害がある人におこりやすい、いわゆる感情のメルトダウンだ。
発達障害がある女性はPMDD(月経前不快気分障害)に悩むことも多いということは、シャナ・ニコルズの「自閉症スペクトラムの少女が大人になるまで」という本で知った。
「こんな風に辛くなるの、私だけじゃなかったのかぁ~」 と涙が出た日のことを思い出す。

コントロールできない生理前のパニック

今の彼氏は、私に発達障害があることを付き合う前に知っている。普段から発達障害がある中での困りごとやその改善策や努力を彼に伝えている。
その中の一つが、生理前に起きる激しいパニック症状。
彼は、デート中に私のパニックを感じると、人の少ない所に連れて行って、冷たい水を飲ませ、大丈夫大丈夫と言ってくれる。 過呼吸を起こしている中でも、彼に優しくされている内に、薬をのまなければ!という客観的になれる瞬間がやってきて、薬を飲む、というのが生理前の日常。

私は、パニックになると彼に当たってしまう。「放っておいて!」と心配する彼を突き放したり、かと思えば「しんどいよ、コントロールできないよ」と泣きじゃくって電話したり。
一人でいると、叫び声が出そうになったり、溢れ出すイライラを制御できずに物を投げてしまうこともある。
そんな自分がつらくて、誰かにしがみつきたくなってしまう。

こんな風に自分をコントロールできない生理前のパニックを、後から客観的に振り返ると決まって恐ろしくなる。私はどこかおかしいのではないだろうか……と思ってしまう。
そして、お酒を飲んで酔っ払っている時の父親のことを思い出す。自分の感情と行動をコントロールできていない酔った父親と、生理前の自分を重ねてしまうのだ。

「落ち着いたら話そう」が聞き入れられない、父と私

酔った父親が絡んでくるのに耐えられず、私は泣きながら抗議したことがある。
「パパがお酒をやめられないのはわかってるよ!だけど私は怒鳴られたり手を挙げられたりするのが怖いから酔ってる時には話したくない!」と言った。
母のいるキッチンに逃げ込み、洗い物をしていた母を挟んで父と私は対峙した。酔った父はリビングから追ってきた。父は、
「そんなこと言ったってしょうがないんだよ、だってパパがお酒がやめられないのは病気なんだよ」
と言った。そんなのわかってるよ。
「それは知ってるから、酔ってない時に話そうって言ってるんだよ!」
さっき逃げようとした時に、父に掴まれた腕はまだ強張っていた。貴方が落ち着いたら話しましょうと言っているだけなのに、何故聞き入れて貰えないの?という気持ちが渦巻いていた。

PMDDでメルトダウンを起こして、彼氏にSOSの電話をかける。出て貰えない時は何回も電話をかけてしまう。電話に出て貰えて、お水飲んでごらん、深呼吸しようね、と優しく誘導して貰えても、つい叫び声が出てしまう時がある。
彼が 「さかなは今、冷静じゃないよ。薬は飲めた?落ち着いたら電話しよう」 と言ってくれているのに 「落ち着けないよ!薬は飲んだ!どうしたらいいの!」 と、飲んだ頓服薬が効いてくるまで泣き喚き、物を投げてしまう時もある。

PMDDのパニックの最中にいる私は、溺れてもがいて、必死に彼氏にしがみついているみたい。私と彼を、引き離さなければならない、彼を今この場に縛り付けるべきじゃないという気持ちが点滅する。

それでも、苦しい、助けてと電話やLINEで粘着せずにはいられない私。
私は、父のような溺れている人にしがみつかれる苦しさや痛みを知っているのに、何故同じことをしてしまうんだろう?

恋人を大事にしたい。その為に私がしなきゃいけないこと

私は今、月経困難症に処方される保険適用の超低用量ピルを服用している。
今まで服用していたピルは、保険適用ではなく、月経困難症にも効くと言われ処方された避妊もできる自費のピルだった。
婦人科によって保険適用のピルは処方しないクリニックもあるという知識もなかった私が、保険適用のピルを処方してくれる婦人科に辿り着くまでに一年かかった。
月に2回通うカウンセリングでは、自分の行動を振り返り、気持ちを鎮めてくれる頓服薬を飲むタイミングや、飲むシチュエーションの基準について毎回相談して調整している。

DV加害者の面を持つ父と、彼にすがって迷惑をかけてしまうPMDDの私を隔ててくれるものがもしあってくれるとするなら。それは口だけの約束に頼らないことだと思う。
父は、「もうしない」「気をつける」。そう言って、病院に通い薬は飲んでいるけれど、私と話す時にお酒をやめてくれるわけではなかった。お酒を飲んでいる時に話しかけないようにしよう、と気をつけてくれるわけでもなかった。最後は「しょうがないんだよ」で終わった。
だから私は父のように、「もうしません」という口約束だけで終わらせない。「生理だからしょうがないんだよ」と生理を免罪符にして、彼に頼る事はしたくない。
「婦人科でピルを変えて貰えないか相談してくるね」「物を投げたくなったら自力では普段の自分に戻って来れないから薬を飲むルールにしてみるね」。こんな風に、気をつける点を具体的にして、彼に宣言して実行していくこと。
カウンセリングに通い、認知行動療法を受け、服薬する、そういった努力を「し続ける」ことを、強く強く意識している。

生理と生理前のパニック、そして父に対する私のトラウマは分かち難く結びついている。
切り離したくても、簡単には切り離せない。私はそれを丸ごと受け止め、これからも彼を大事にする為に努力を続けていく。
調子が良い時があっても、決してその努力をやめないことを誓いながら。