私の母は、何でも器用にこなす人だ。
正社員の仕事をしながら、家事も完璧にやる。非の打ち所がないように見える母だが、どうやら私の子育てには昔大変な苦労をしたようだ。
確か高校を卒業してしばらくしてのことだ。母は私にこう言った。
「あんたの子育て失敗したかもしれんわ」
確かに私と母は、たくさん衝突した。不器用な私は、数え切れないほど母に迷惑をかけてきた。25歳で結婚してようやく実家を出た私だったが、「私は失敗作だ」という想いはずっと消えなかった。ただ一人、自分を認めてほしいはずの母親にそう言われるのはなかなか辛いものがある。
しかしつい最近、こんなことを言われた。二人目の子供が産まれて、母が自宅に手伝いに来てくれた日の帰り際のことだ。
「あんたの時は周りの子と比べて失敗したと思っていたけど、子供には一人一人個性があるんだからそれを認めていかなきゃいけなかったのかな」
その言葉を聞いた時、私は何も言えなかった。でも今、自分が子育てをする立場になってみて初めて分かるような気がする。
昔より、今の方が母との関係は良好だ。ある程度は距離感があった方が良いのだろう。あの日言われた言葉を私はどんな想いで聞いていたか、伝えたい。