私の街でもイルミネーションが点灯し、クリスマスソングが流れ始めた。
大人になった今でもワクワクするし、クリスマスは待ち遠しい。
先日、街で幼い子供を見かけた時、ふと自分の子供の頃のクリスマスの事を思い出したので読んでもらえると嬉しい。

頭元にお礼のみかんを置いて、25日をワクワクしながら待った

私は高校生まで、田んぼに囲まれた田舎で暮らしていた。
クリスマスといえばイルミネーションだが、夜9時にもなれば一番輝いているのは街灯ぐらいで、外を歩く人はほとんどいない。

家の中ぐらいはと、母が電飾の少し弱ったクリスマスツリーを飾ってくれていた。
だが、不思議なことに、田舎の私の家にも毎年当たり前にサンタクロースが来てくれていた。
何の疑いもなく、12月に入ると母にサンタクロースにまつわる絵本を読んでもらい、欲しいものを手紙に書いた。お風呂が苦手だった私は12月24日の夜だけ、長めにお風呂に入り、身体もピカピカにした。
いつからかプレゼントをもらうだけでは悪いと思ったのか、頭元にお礼のみかんを置いて、25日がくるのをワクワクしながら待っていた。

母の「え?知らなかったの?」という表情に、私は衝撃を受けた

ただ、毎年サンタクロースは来てくれてはいたが、どうやってプレゼントを枕元まで届けてくれているのか不思議でしかたなかった。
疑問はいくつかあって、絵本によると、サンタクロースは煙突から入ってくるらしい。
家にはない。家を間違えずに大量のプレゼントをどうやって届けているのか。
絵で見るサンタクロースはとても恰幅がいいおじさんだった。プレゼントを抱えて家に入いるのだから、それなりに幅のある隙間でないと挟まってしまうと。

ある年、母にこれらの疑問をぶつけたことがある。母は、私がこういう事を聞いてきたらと想定していたのか、考える間もなく、サンタクロースはワープができると言ったのだ。
毎年、テレビからワープして家に入って来るから、煙突はなくても大丈夫だし、鍵を掛けていても家に入れるのだと教えてくれた。
母の「え?知らなかったの?」という表情に、私は衝撃を受けた。
すごい!サンタクロースって超能力おじさんだったのかと。

しかし、それから、超能力おじさんの正体を知るまでにあまり時間はかからなかった。
あのときの残念な気持ちは今も忘れられないが、ちょっぴり大人になった気もした。

誰かの幸せを願い、頑張るすべての人がサンタクロースだと思う

あれから、ぱったりサンタクロースは来なくなったが、大人になり、私には身近にサンタクロースが5人いた事に気が付いた。
毎日一生懸命働き、プレゼントを準備してくれた両親。
プレゼントの隠し場所を提供してくれた祖父母。
プレゼントを喜ぶ私と一緒に喜んでくれた兄。
他にもクリスマスケーキを作ってくれた人、おもちゃ屋さんでプレゼントを包装してくれた人など、もっとたくさんいるかもしれない。
私は、誰かの幸せを願い、頑張るすべての人がサンタクロースなのだと思う。

毎年クリスマスはやって来る。
プレゼントの事ばかり考えていた日、受験勉強で楽しい事を禁止され、ケーキだけは食べられた日。大学生になり、家族ではなく、友達との飲み会、好きな人と緊張しながら食事をし、イルミネーションを見た日。就活に苦戦し、不安ばかり膨らみ、チキンをやけ食いした日。そして社会人になり、サンタクロースの衣装を着て、子供たちに手を振った日。

今度は私が、今までたくさん貰った優しさを、周りの人に届けられるサンタクロースになれたらいいなと思っている。