母へ
ずっと言えなかったことがあります。あの日、あの時の「選択」について。
母と父がなぜ結婚したのか、今でも不思議でたまりません。自分の記憶を辿っても喧嘩をしている日々しか浮かんでこないから。
別れが決まり、母と父どちらについて行くのか、小学校3年生の私には残酷すぎる選択でした。妹にとってはもっとでしょう。思い出すと、妹の泣き叫ぶ声が今にも聞こえて来るような気がします。
こんな結末になってしまった元凶の父を私は許さないです。でもあの時、私は父について行こうと考えていました。信じられないと思いますが。
もちろん、決して誇れるような父ではなかったです。ぶっきらぼうで、髪の毛も髭もモサモサで、ちょっと近寄りがたい父でしたが、お友達が来ると500円を無言で差し出してくれたり、バイクの後ろに乗せてくれたり、嫌そうにしながらもなんだかんだで運動会は参加してくれたり、その不器用な優しさが私は大好きでした。
母について行ったこと、私は後悔していません。感謝しかないです。
ひとりで育てるには辛く、苦しい時があったと思います。どんな時も抱きしめて、沢山の愛をくれてありがとう。
でも、あの頃の私は母と同じくらい父のことが大好きだったんだよと、胸の内にしまっておいた想いを今、打ち明けようと思います。