私には、旅が必要だ。
だって私は、旅を職場にしようとしていた人間だから。

2度沖縄に、1度オーストラリア。どれも最高の思い出の修学旅行

多分、私ほど出不精な人間はいない。旅行は嫌いじゃないけれど、無理やり連れ出される方が好きだ。自ら行こうと思ったことはないし、家族も出不精揃い。

なんなら近年の旅行は軒並みテーマパークだ。家族で行くと、行き当たりばったりということはありえない。全員スケジュール詰め込みが大好きで、せっかく来たんやからのんびりなんかお金もったいないねん人間なので。元を取る、が口癖な我々にテーマパークというのはもはやスケジュールを消化し満足するだけの場でしかない。
だから私はこの家族旅行を旅行と呼んだことはあまりない。旅行にしては忙しすぎる。

そういう意味で修学旅行って最高だと思う。全然知らないし、多分家族だけだったら行かないようなところ、地域に赴く。私は2度沖縄に、1度オーストラリアにそれぞれ修学旅行として行ったけれど、どれも最高の思い出だ。

そもそも学友と仲が良くない私だったけれど、修学旅行は別である。なんたって住んでいる場所と全然違う場所に行くのだ。
嗚呼思い出すオーストラリア、ケアンズ空港から出発するバスの車窓、真っ先に目に入った白いオウムの姿を。野生のオウムとか野生のワラビーとかが日本でいうスズメやカラスくらいの感覚でいる、
あの体験は多分修学旅行でなければ得られなかった。少なくとも、私というパーソナリティにおいては。

旅行会社へ就職してやろう。非日常が日常になる生活に憧れていた

だからこそ、私は旅行会社に就職してやろうと思っていた。
旅行会社というのは日本だけでも小さいところも含めれば本当に大量にある。

私自身はツアーの同行でもいいし、最悪京都の観光案内所でもいいと思っていた。個人のお客さんに合わせて動いてもいい。本当は修学旅行に携わりたいなとは思っていたけれど。どっちにしたって自分では行き先が決定できない側の「旅行」だ。
もちろんお客さんが楽しむことが一番だけれど、私だって知らないものを知ることができるし、体験していないことを体験できる。

少なくとも非日常が日常になる贅沢。ノマドのように生きる、といえばかっこいいかもしれないけれど実際そういうことだ。定住しないような生活に、とにかく憧れていた。
自分の知らないものに、体験し得ないものに、とにかく惹かれていた。
そのためなら給料は別に少なくっていいかなとまで思っていたのである。あんなに、お金がもったいないねん人間だらけの我が家から出てきた人間がこうなるのだから、旅というものは恐ろしい。

旅行が本気で好きな私を採用してくれた旅行会社は見事に倒産

とはいえ、旅行業界に入るには純粋すぎる動機だと思っていたけれど、この話をして採用してくれた旅行会社があるのだからそれでいいのだ。私は、本気で旅行が好きなのである。

ただ、そこに勝てなかったのが今の疫病状況である。入社先は見事に倒産してしまい、その前に私は新入社員だからと、とっとと首を切られてしまった。内定が決まって何度か電話していた暫定上司の方が電話なさってきた時は愕然としたが、仕方がないなとも思う。

だけど、やっぱり2年近く経った今、私はもう仕方ないなで諦めきれなくなっている。すでに、私はやっぱり小さな会社なのだけれど内定をいただいている。そのために生まれて初めての一人暮らしも決意した。今の感染状況でどうなるかはわからないけれど、でもやっぱり私は旅に生きていたいと思うのだ。

だから、どうか神様。私に旅をください。