大学1年から付き合った彼がいた。付き合ってから1年ほど経ったころ彼の留学が決まった。期間は1年間、行き先はフランスだった。

初めて「お付き合い」した彼と、留学で1年も離れることが大きな不安

とてもやさしい彼だったと思う。同じ講義を受けていたことがきっかけで知り合い、地元が比較的近かったこともありよく話すようになり、付き合うようになるまでそれほど時間はかからなかった。
それまでも男性と付き合ったことは何度かあったが、ちゃんとデートをしたり、ちゃんとプレゼントを送ったり、カップルらしいことをしたり、いわゆる「お付き合い」をしたのは大学生になって付き合った彼が初めてだったと思う。
だから、彼が留学に行ってしまうことが余計に悲しかった。頑張ってほしいな、良い経験だなと思う一方で、1年間離れてしまうことには大きな不安があった。

そんな不安な気持ちを抱える私を他所に、あっと言う間にその日は来た。彼が出発する当日は空港まで見送りに行き、彼の後ろ姿を見送った。

彼とヨーロッパで過ごす楽しい夏休み。もう不安はない、大丈夫

日本とフランスでは大きな時差もあったが、彼は合間を見つけてはテレビ電話をかけてくれた。学校の授業のこと、寮の生活のこと、日々の生活のこと、日本にいるときよりも沢山話をしていたかもしれない。
また、夏休みをつかって彼のもとを訪れ、旅行をする計画も一緒に立てた。それだけが希望で、それだけが楽しみだった。
夏になり、私は予定通り彼のものと訪れた。初めていくヨーロッパ、そして久しぶりに会う彼にドキドキしていた。旅行には少しの不安はあったものの、フランス語で現地の方と話す彼はとても頼もしく、また初めていくルーブル美術館、エッフェル塔、ニースの海岸など素晴らしい観光地にも胸が高鳴る日々だった。
約1ヶ月間、夏休みのほとんどを向こうで過ごした。楽しい時間はあっという間に過ぎていった。

帰る頃には、「もう半年しないうちに彼は日本に戻ってくるし、もう不安はない、大丈夫」と私は思っていた。

クリスマスに帰国した彼を迎えに空港へ。待ち受けたのは別れの言葉

そこからの約半年間はあっという間に過ぎていった。私は彼が戻ってくる日までの残り日数を数えては心待ちにする日が続いていた。そしてクリスマスの日、彼は日本に帰ってきた。その日も私は空港へ迎えに行った。そしてその帰り道、私は彼に別れを告げられた。

私は、何を言われているのかよくわからなかった。
帰ってきて別れることになるとは考えていなかったし、ましてや帰ってきた当日に別れることとは夢にも思わなかった。
理由は、留学で考えや価値観が変わったとか、そんなことだったと思う。本当にそうだったのか他に理由があったのかは分からないし、今になってはそれが真実がどうとか、そんなことはどうでもよいことなのだが、とにかくその日、私たちは別れた。

1年間、彼の帰りを待っていた恋の終わりはこれ以上にないほどあっけないものだった。
そのあと私は、彼との別れをしばらく引きずったものの、自然と好きな人は出来たし、彼氏も出来た。今では結婚して夫と楽しく暮らしているが、クリスマスが近づくと彼のことをどうしても思い出してしまうのである。驚くような話をクリスマスにしてきた彼を。