最近、父と某チェーンうどん屋に行った。
私が頼んだのは、ちょっとリッチな肉うどん。一方、父は一番安いかけうどんを頼んだ。
使い古した財布から、キャッシュレスの時代に取り残されて物悲しげな千円札を出す。なんだか無性に悲しくなった。

年頃の娘にしては、父とはずいぶん仲が良い。しかし、高校三年生の絶賛反抗期の頃、私は大学を中退して安月給の専門職に就いた父を軽蔑していた。そして、父を反面教師にしようという思いも若干あり、私は教育大学への進学を決意する。
必死の勉強の末、私は見事志望校に合格した。勉強している際も、私はちゃんと大学に通って立派な人間になるのだと常に意気込んでいた。
そんな私の気も知らず、合格発表を一緒に見に行った父は泣いていた。初めて父の涙を見た。

うどんを前に相対する二人。私は父にちょっぴり多めに肉をお裾分けする。
パパ、毎日身を粉にして働いてくれて、学校に通わせてくれてありがとう。こんなに娘想いの父を反面教師にしようだなんて、馬鹿なことを考えてごめん。
来年からは私も社会人、今度は私がもっと美味しいものを食べさせてあげるから、楽しみにしていてね。