22歳で迎えたクリスマス、初めて性行為をした。楽しくて、翌日も同じ人と会った。
10歳年上で、タバコを吸って、おそらく女性に好かれて生きてきたであろう人。その場のノリで、大学生だった私に「したい」というような人。

彼は、私の恋人ではなかった。

友人からぜひ会ってほしいと言われていたのが、彼だった

もうすぐ、23歳で迎えるクリスマスがやってくる。私は未だ、恋人がいたことはない。

彼と出会ったのは元バイト先の飲み会だった。私がバイトを辞めた後に、別の地域から赴任してきた社員だった。そして、バイト仲間だった友人からぜひ会ってほしいと言われていたのが、彼だった。
友人は、酔った勢いで彼と何度か関係を持っていた。同時に「絶対好きにもならない」とも言っていた。

みんなで飲んでいる間も、私が彼と話すことはほとんどなかった。初対面同士の挨拶は交わしたが、これといって何の印象も持たなかった。ただ友人と「かっこいいね」「でしょ」なんて、コソコソ話したくらいだった。

二次会も終え、そのままお泊まり会をしようと約束していた友人の家に向かった。2人でメイクを落としながら、「シャワーは明日浴びようか」「今日楽しかったね」と一日を振り返っていると、不意に友人が話し始めた。

男の人と過ごすクリスマス。それだけでも、十分思い出に残ったはず

「実はさっき彼に、3人でしたいって言われたんだ」

特別驚きはしなかった。友人と彼はそういうことをすでにしているのだから。ただ友人が「一緒に彼の家に行かない?」と言った時は、さすがに戸惑った。
「彼のこと気に入っていたんじゃないの?」「好きじゃないよ」という、そのやりとりを信じてしまった。

結局私たちは彼の家に行き、シャワーを浴びて、ベッドに川の字になった。彼はどうせ本気じゃないだろうと思っていた。男の人と過ごすクリスマス。それだけでも、私にとっては十分思い出に残るクリスマスだった。
しかし、「しないの?」という彼の言葉を聞いた時、私の中に劣等感が湧いた。

私は、大学を卒業する手前、恋愛経験もなければセックスの経験もない自分を恥じていた。その気持ちと並行して、性に対する興味は増していた。
大学4年間の間に、異性との接点がなかったわけではない。しかし、何度かデートを重ねた相手ができたとしても、付き合うまではいかなかった。

友人は笑いながら、「大丈夫」「楽しいから」と言っていたのに

暗い寝室の壁に、彼の言葉が反響する中、「始めましょう」。そう言ったのは私だった。

そこから先は、彼に言われるままに動いた。途中で、友人に本当に進めていいのかも聞いたが、彼女は笑いながら「大丈夫」「楽しいから」と言っていた。

気がつけば、友人は彼の家からいなくなっていた。
ほとんど、彼と私2人の時間だった。

そして翌日、彼との時間が楽しかった私は、また彼の家に行った。それからしばらくして、突然友人からの連絡が途絶えた。
「その子、絶対彼のこと好きだったでしょ」。他の人に言われるまで、考えもしなかった。

誰かを想う気持ちや、それを共有して育てる喜びは知らない

友人とも彼とも連絡が途絶えて一年、もうすぐ次のクリスマスがやってくる。あの日のことを、後悔はしていない。
今思えば、あの時抱いた劣等感も、当時の私にとっては大きなコンプレックスだった。綺麗な思い出として捉えるとすれば、彼との時間がその悩みを救ってくれたのだ。実際に、あの日から私は異性との会話に変な緊張を覚えなくなった。

誰かと恋愛話をするときも、置いてきぼりにされているような悲しさを感じなくなった。

しかし恋人との関係を、文句を踏まえつつも、なんだかんだ楽しそうに話す人々を目の前にすると、哀しい気持ちを覚えるようになった。「性行為」は知ったかもしれないが、誰かを想う気持ちや、それを共有して育てていく喜びを私は知らないのだ。

これから先も、クリスマスがくるたびに、あの日のことを思い出すのだろう。
他の女の子と比べて抱いていた劣等感が消えたと同時に、大切な気持ちを知らないという別の焦りを抱くきっかけになった日のことを。