大学生時代に、何となく憧れている男の子がいた。彼は無口でミステリアスな印象の子で、ちょっと近寄りがたい子だった。クリスマス前に、友達に誘われて飲み会に参加した。
彼氏彼女のいない4人で、バカみたいに飲もうという、いかにも大学生な飲み会。そこには、彼女と別れたばかりの彼がいた。彼は、近寄りがたい雰囲気とは真逆に、よく笑う男の子だった。目をクシャッとして控えめに笑う、子犬みたいな彼のそんなギャップがすごくいいなと思った。

私は彼の一番仲のいい友達。だから彼女じゃなくてもよかった

そして、一週間後、彼は私の友達と付き合った。それは衝撃的だったけど、可愛くて優しい友達と付き合うのは必然のようにも思った。それからも私は、彼を含む共通の友達とよく飲むようになった。
毎週のように誰かの家に集まり、よく飲みよくしゃべり、時には距離を過った。私は、彼の一番仲のいい女友達だったと自負していた。彼女じゃなくてもいい。楽しくてうれしくて、それでよかった。
そして半年ほどして、友達とは別れた。彼が浮気をしたらしい。泣いている彼女を見て、100%寄り添ってあげることができていなかったと思う。二人が別れたところで、私と彼は仲良く接していたし、関係は変わらない。それは「友達」と「恋人」の差だと思っていたし、いい意味での違いだとも思う。
10月の終わり、状況が一変した。彼から「付き合おう」と言われた。
うれしかった。すごくうれしかった。でも、はっきりと返事はできなかった。「付き合う」ことはなんだか友達への裏切りのような気がした。だから返事はできなかった。にもかかわらず、一夜を共にしたのは私の過ちだ。

彼に彼女ができた。その時初めて、恋だったと気付いた

それからズルズルと関係は続き、12月。なんとなく開いたインスタの、彼のストーリーで、彼に新しい彼女ができたことを知った。髪の長い、清楚な雰囲気の子だった。
その時、ああそうか、と思った。あれはやっぱり恋だった。少なからずショックを受けている自分に、気が付いたのだ。
クリスマス。知りたくもないけれど、ストーリーで、彼は彼女と一緒に笑っていた。知りたくもないのに目に入ってくるのが嫌で、でも、ブロックするということもなんだか彼を意識しているみたいで嫌だった。
私は男友達を含めた4人で遊んだ。素直に楽しかったのは本当。私はインスタでストーリーにあげた。普段の日常であれば、その行為は別になんて事のないことだったけど、その日はただの強がりだったと思う。
彼だけに届けばいいと思った。彼だけが見てくれればそれでよかった。私は別に楽しいよ。あなたなんかいなくたって楽しいよ。それだけ。

私にとって、学生時代のクリスマスは彼への思いでいっぱい

だけどその日、彼の履歴がつくことはなかった。クリスマスのその夜、私は特別ではなくて、彼の中の背景の一部なんだと気が付き、私は一つの恋を終わらせた。
ちょうど一年前のクリスマスに始まったのであろうあの恋が、失恋に変わるなんて皮肉だと思う。「付き合おう」と言われたあの日、私がしっかりうなずいていれば、彼のストーリーに映る姿は変わっていたかもしれない。
そんな考えても仕方のないことを考えた。正解は何だったのかははっきりわからない。ただ、あの時の切ないクリスマスを思い出して、懐かしめる今の自分がいるという事だけが事実で、それがすべてであると思う。
それでも、学生時代のクリスマスが彼への思いでいっぱいで、思い出してしまうのはやっぱりまだちょっと悔しいから、この文章にすることで、強がりだと自覚しながらも、きれいな思い出にしたい。
あれは私の青春をのせた思い出の恋だ。