私に旅が必要な理由は、日常では気付けない本当の自分に出会えるからです。
旅といって一番に思い浮かぶのは、2017年の春に行ったひとり中国・天津旅行です。
コロナ禍で自由に旅行にも行けない未来が来るなんて思いもしなかった当時、私は約3年付き合った中国人の彼に振られて傷心中でした。
だからこそ、普段なら絶対にしないひとり旅をしようと思ったんだと思います。
旅の目的地として中国を選んだのは、日本から近く、食べ物が美味しいからという単純な理由でした。
とはいえ中国は当時別れたばかりの元彼のふるさとであり、交際中に何度も一緒に訪ねた思い出の場所です。2人の思い出の場所に1人で行って、ついでに元彼のことも吹っ切ってやろう!みたいな考えもあったかもしれません。
インターネットで見つけた文言に惹かれ、北京から天津に向かうことに
初めてのひとり旅、中国の中でも私が選んだのは北京でした。聞いたこともないような所に行こうなんていう勇気もなく、言わずもがな首都です。
4日間の日程の中で2日目の夜、安ホテルのベッドで寝転がり、「明日はどこに行こうかなぁ」なんて思いながらインターネットで楽しそうな場所を探していると、北京から新幹線で30分ほど離れた場所に天津という都市を見つけました。
"古くから貿易拠点の港として栄えた街。港町らしく外国の影響と古き良き中国の伝統的な雰囲気の混ざる近代都市"という文言に惹かれた私は、すぐに天津に行くことを決めました。
そして翌日の朝、凍えるような寒さの中、天津行きの新幹線に乗るため北京の駅へ。
まずは窓口で切符を買わなければなりません。
いつもは元彼が私の分も買ってくれていたけれど、これからは自分でやらないと。
中国では行き先や座席の等級をしっかり伝えないと日本のように汲み取ろうとはしてくれないので、勇気を出してはっきりと中国語でお願いしてみました。
すると無事天津行きの切符を購入することができ、このあたりから「意外と元彼がいなくても生きていけるかも」と思い始めました。
書道を嗜むおじさま書いてくれた「日中友好」の文字に感動した
そこから天津行きの新幹線に乗り、着いてからは名物の肉まんを食べたり、タクシー初乗り13元(約260円)という物価に驚いたりしつつ、色々な場所を観光しました。
天津は日本でいう横浜のような都市で、中国らしさと異国風情の入り混ざる素敵な都市でした。
天津観光の最後の目的地、水上公園に着いたのは夕方過ぎた頃でしょうか。
中国ではよく朝と夕方にお年寄りが公園に集まって、蹴鞠やダンス、書道(水を入れた大きな筆で地面に字を書く)を楽しんでいます。
私はちょうど近くで書道を嗜んでいらっしゃったおじさまに声を掛け、日本から1人で来たこと、天津は初めてだからおすすめの場所や料理があれば教えて欲しいこと等、お話をしました。
そして書道にもチャレンジしてみたい旨を伝えると、彼は快く筆を貸してくれました。
しかし、自分の胸ほどまである大きな筆をうまく扱うのは難しく、みみずの這ったような字でなんとか「我来天津了(天津に来たよ)」と書いて、おじさんに筆を返すと、おじさんはものの数秒の間にとても綺麗な字で「日中友好」と書いてくれたのです。
とても感動しました。
自分は思っていたより強い。そんな私に気付けた天津ひとり旅
だって、大切な彼に別れを告げられ、ずっとひとりぼっちのような気持ちだったから。
1人で外国に行ってその国の言葉で現地の人と交流なんてできないと思っていたから。
自分は弱い人間だとずっと思っていたから。
でも、本当は全部違ったから。
私は自分で思っていたよりもっと強い。
元彼がいなくても、自分の足で立って歩いていける。
私のことを想って、助けてくれる人や優しくしてくれる人もたくさんいる。
そんなことを思い知った初めてのひとり旅でした。
天津は今でも私にとって大切な場所です。