私が長年ひとり暮らしをしていても、自炊ができない理由

なぜ、長年ひとり暮らしをしていても自炊ができないのか。
問題の根元はひとり暮らしのスタートダッシュにあったと思う。

大学進学を機にひとり暮らしを始めた私の新生活、その始まりには母がいた。
私と一緒に狭い新居にやって来た母は、私と一緒に入学式へ行き、私が新学期のオリエンテーションを受けている間に、冷凍庫を手作り料理でいっぱいにした。
入学してから1カ月、私は母の作った料理を解凍しながら暮らしていた。

次はゴールデンウィーク。今度は叔母が来て、たくさんの料理を作った。空っぽになった冷凍庫は再び満杯になった。それから1カ月、私は叔母の作った料理を解凍しながら暮らした。
その後もなにかと私の保護者たちは私の家を訪れては、冷凍庫をギチギチにして帰っていった。ひとり暮らしにも関わらず、私の食生活は“保護者が作った食事”or“外食”or“それ以外”、だった。

晴れて一人の“ひとり暮らし”が始まり、見えてくる私の自炊スキル

そして今、学校も卒業して、保護者たちもゆるやかに子離れをはじめて、私は新居へと移り、晴れて一人の“ひとり暮らし”をしている。いつのまにか保護者たちが買っていた家具も、食器も、壁に張ったお札も、ぜんぶ前の家に置いてきた。家賃も自分で払っている、まぎれもない私の家だ。

しかし、生活が整ってくると歪みも生まれる。自炊のスキルが著しく低いことに気が付いたのは、新居に越してきてからしばらく経ってからだった。ヤバイ、と思った。毎日コンビニやファミレスに通って、財布は軽いし体は重い。自炊をしなければ、と思うけれど、そのやり方がわからないのだ。

少しずつ、調理用具を集めた。全てを電子レンジと炊飯器で済ませていた生活は終わりだ。フライパンと鍋とIHコンロを購入するところから始めた。オリーブオイルを買って、ブロッコリーと麺をゆでて、パスタを作った。
お店で出てくるのとは違う、くたくたになったブロッコリーともちゃもちゃした触感の麺。けれど、私はこれが好きだったし、これが食べたかった。料理が上手な人からしたらレベル1みたいな食事だけど、私はその経験値の1が嬉しかった。

きっと素晴らしい料理人だって、ゆで卵を作った最初の一日があるはず

新年があけて、実家から送られてきた餅に助かってる。とりあえず焼き、しょうゆをかけて、食べればおいしいのだ。これで1食分。他のタイミングで野菜は摂取しなければいけないが、ルーチンになってしまうとこんなに楽なのかと実感している。

毎日自炊をしている人たちだって、別に料理が大好きだからやっている人ばかりではないだろう。しょうがなくやっている人だっているはずだ。けれど、なんども繰り返した先にしか、インターネットでよく見てしまうおいしそうな映え料理(あるいは、映えない茶色の、一番おいしそうな料理)はないんだろう。きっと素晴らしい料理人だって、ゆで卵を作った最初の一日があるはずだ。

1回でも多く自炊をしよう。1日に1種類でいいから野菜を食べよう。1日に1食でいいから、自分で作った料理を食べよう。私は去年の私より、料理をやる回数を、増やしたいと思います!