みんなに褒められた短編小説。書く側の喜びを味わいたいと思うように

今年、どうしても挑戦したいことがある。
それは、小説の賞に応募すること。

「読む人を感動させることのできる小説を書きたい」
そう考えるようになったきっかけは、私が中学生のときに書いた短編小説だった。
当時、周りから"本の虫"と呼ばれるほど読書好きだった私。3年間、校内で最も本を読んだ生徒として、毎年表彰されていた。小説だけで月に20冊ほど読んでいた。

それもあって、国語の授業で物語を書く課題を出されたとき、すぐにストーリーが浮かんだ。
どのジャンルの本も読んでいて楽しかったが、特にホラー小説に関心があったので、ホラーを題材にしたものを書いた。他のジャンルの本から得た知識もフルに使って書いた自信作だった。
読んだクラスメイトや国語の先生からは好評だった。
「文字だけでもすごく怖かった」
「さすが犬屋敷さんだね」
「本屋さんで売ってたら絶対買う」

みんなから褒められて嬉しかった。何の取り柄のない私でも、他人を感動させることができるのだと気づいた。本を読む側としてだけでなく、書く側としての喜びも味わいたいと思うようになった。

夢の中で、生き生きと執筆する私。あんな風になれたら…

色々あって、学生時代はそれ以来、なかなか執筆する機会がなかった。社会人になって少し経った頃、ふと書きたくなって再開した。
少し前に、2ヵ月かけて書いた推理小説を、友人たちに読んでもらったことがあった。その小説はページ数が多すぎる上に、ストーリー展開がかなりグダグダだったと思う。自分でもがっかりするほどの駄作。

でも、友人たちは家族にも見せるほど感動してくれた。
「もっと読みたい。小説家になってよ」
「賞に応募してみたら?」
そんな言葉をもらいながらも、私には無理だろうと諦めていた。その場では、私はただ笑っているだけだった。

その日の夜、自分が小説家になっている夢を見た。
親友と、もう一人ある男性が私のアシスタントとして働いていた。そして、夢の中の私は執筆しながら、とても生き生きとしているように見えた。
それ以来、毎日夢のことを思い出し、あんな風になれたらいいなと思っていた。

小説家になりたい。いつしか、そんな気持ちが強くなっていった。

小説家になるのは簡単ではない。それでも、悔いのない生き方をしたい

私が小説を書いていることを知っている人たちは応援してくれた。その一方で、家族からは反対された。
「本業しながら両立するのは無理でしょう?」
「趣味の範囲でしなさい」
やや強い口調で言われたこともあり、しばらく小説を書くことをやめてしまった。

それから1年ほど経って、祖母が闘病も虚しく霊山へ旅立っていった。
遺品を整理していると、祖母が遺した手紙が出てきた。そこには、私が孫として生まれてきたことへの感謝と、「どんなことにも挑戦して自分らしく生きてほしい」との言葉が書かれていた。
祖母は私のことを心配して反対していたものの、実は応援してくれていたのだと知った。

私はもう一度、挑戦することを決意した。すぐに受賞しなかったとしてもいい。
まずは、一生懸命になって書いたものを、賞に応募することが目標。知識のある人に読んでもらい、きちんと評価してもらうことに意味がある。

仕事の合間での執筆となると、私にとって少しハードかもしれない。小説家になれたとしても、いつも思い通りの作品が書けて周りから好評とは限らない。普通の会社勤めとは違い、安定した給料が入らないので不安はある。

仕事にするのは決して簡単なことではないのは分かっている。それでも、たった一度の、犬屋敷みちるとしての人生で悔いのない生き方をしたい。
まだまだ人生は長いので、自分のペースで一歩ずつ前に進みたいと思う。
そして、いつか私の小説で老若男女問わず、たくさんの人々を感動させたい。