旅は「自分が好きな自分」を探す一歩だ。
私が一人旅に出かけたのは、ある性格診断の結果がきっかけだ。「一人旅でより自分と向き合える」という言葉を思い出し、離職していた私は一人で島に向かった。
職場の人間関係に悩み、解決のヒントを求めて性格診断を受けた
「この上なく孤独、そして最も希少で戦略に長けている性格タイプのひとつ」「全人口のわずか2%を占めていて、特に女性が珍しく、全人口のたった0.8%」
これは私の性格診断の結果の抜粋だ。
性格診断を受けた当時、私は職場の人間関係に悩んでいた。解決のヒントになるようなものはないかと探している中、見つけたのがこの性格診断だった。
専門的なものではなくネットで診断できる。たくさんの質問に対する答えをもとに、性格を十六パターンに分類するものだ。結果は前述の通り、希少な性格という結果が出た。
診断結果を詳しく読んだ私は安心した。これまで上手く説明できなかった自分自身の考え方や感覚を、第三者が的確に説明をしてくれた、この地球上のどこかに私のような性格の人間がいることを理解してくれている人がいるのだと感じたからだ。
だが、診断結果には受け入れ難いことも書かれていた。
「この性格タイプの考えについていけるだけの才能がない人や、その趣旨を理解できない人は、すぐに、そして永遠にこの性格タイプに対する敬意を失います」
「永遠」とか「敬意」ってかなり強い表現だなと感じたが、私は自分の性格の傾向を知れたことで他人への接し方を改めることができたと思う。
職場でも私の変化を感じてくれる人はいた。しかし結局は上司や会社の方針とそりが合わず、勤続三年目で退職した。人生で二度目の退職だ。
心の支えとなった性格診断の一節に従い、一人旅を綿密に計画
退職してすぐに私はアルバイトを探した。生きる為にはお金が必要だ。幸いすぐに働き先は決まり一安心したが、ふと、こんなに仕事ばかりしてても人生つまらないな、という気持ちが湧き上がった。と同時に、心の支えとなっていた性格診断の「一人旅でより自分と向き合えます」という一節を思い出した。
思えば大学生の時からアルバイトを掛け持ちし「お金を稼ぐこと」に精を出していた。友人の旅行の誘いを断ったこともある。「学生は時間はあるけどお金がない。社会人はお金はあるけど時間がない」とよく言われるが、今の私は時間もお金もある、行くなら今だと思った。
思い立ったが吉日、その後の私の行動は早かった。と言ってもすぐに旅に出たわけではない。自分が心から満足できるよう、綿密に計画を立てたのだ。
行き先は二年ほど前から行きたいと思っていた鹿児島県の与論島。繁忙期を避けて船と飛行機を予約し、どんな天候でも楽しめるよう観光スケジュールを組んだ。
不測の事態が起きることを考え、万全の準備を整えて船に乗った。一人だからこそ何かあった時に頼りになるのは自分しかいない。だがその責任があるぶん、自分自身の好きなように過ごすことができるのだ。
結果は大満足。後ろ髪を引かれる思いで私は飛行機に乗って与論島を後にした。
一人旅という非日常を通して知れた、自分の知らなかった一面と癖
一人旅という非日常を通して、私は「自分が好きだと思える自分の一面」と「考え方の癖」を知ることができた。島の方々が親切だったということもあるが、旅行中の私はとても朗らかで、普段とは比べ物にならないくらい積極的だった。
スムーズな人間関係イコール私が我慢すること、と普段の生活では無意識に思っていたのかも知れない。「これから二度と会うことがないかも知れない人々」、つまり「私のこれからの人生に直接関わらない人々」の前でなら私は「自分が好きだと思える自分」でいられたことに気付いた。
我ながら面倒な性格の持ち主だと思う。前途多難だが、私はまだ見ぬ自分自身を知るためにまた旅に出てみようと思う。