私に旅が必要な理由。
それは、私の、小さな小さなレベルアップを確かめられるからだと思う。

3年前。彼氏と別れて半年経っても言えない傷を癒すため一人旅へ

我が家は昔から旅行が好きだった。
小さい頃から、お盆休みと年末年始には、両親が国内の色んなところに連れ出してくれたし、中学生くらいからは海外旅行に行くこともあった。「幼いうちに色んな場所を見て、経験させてあげたい」という教育的側面も大きかったのだろう。ただ、親不孝なことにその頃の記憶は曖昧で、「〇〇に行って〇〇をしたよね」と言われても殆ど思い出せない。甲斐のない娘だ。

そんな私が旅行を趣味だと言うようになったのは、ここ数年の話。
一番のきっかけは、3年前のおひとり様誕生日旅行だ。
彼氏と別れて半年経っても、まだまだ精神的に傷は癒えていなくて、人生で最も自己肯定感が下がっていた時期といっても過言ではない。

このまま一つ歳を重ねるのかとため息をついた時、日常から離れて、ひとりっきりになりたいという気持ちが湧いてきた。誕生日だし、休みでもとって少し遠くに行ってみようかしらと思い、ひとり旅行をすることにした。

おひとり様旅行というのは結構手間がかかるもので、当たり前だが、全て自分が決めていく。
まず、どこに行くか。いや待てよ、旅先を決めるには、何をしたい・見たいかを考えなくちゃ。限られた日数で実質周れるのは何日だから、初日はここ、翌日はこっちに移動しないと。この辺りはローカルバスを使うけど、時刻表はどうなってる?と頭をフル回転させる。

自分を見つめなおす傷心旅行で得たのは、「ひとりでできる」自信

この傷心旅行は、自分の見つめ直しが最大のミッションだったが、それ以上に得たものは、「失恋して落ち込んで、自分では何一つできないと思っていたけど、案外私ってひとりでできるじゃん」という自信だった。

それ以来、ちょこちょことひとり旅をしている。
訪れた場所でリフレッシュして、また仕事を頑張るかと活力を得たり、抱えているモヤモヤを整理したり、その時々のコンセプトはあるのだが、「ひとりでできるじゃんポイント」をチャリンチャリンと増やして、小さなレベルアップを楽しんでいる面も大きい。

この「ひとりでできるじゃんポイント」は本当に些細なことだ。
例えば、一人でごはんを食べるのが恥ずかしかったけれど、今は堂々とごはん屋さんに入れる。
道で迷った時、スマホで地図アプリを頼りにキョロキョロするしかできなかったけれど、通りすがりの地元の人に話しかけられる。
以前は人目につかないよう、訪れた先々での写真はささっと撮っていたが、今は自分のペースで楽しめる。

訪れたことのない場所で、一人で「初めて」を積み重ねることの大切さ

そんなの恥ずかしがらずに出来るよという人も沢山いると思うのだが、私にとっては、訪れたことのない場所で一人で初めてを積み重ねるというのは、小さな成功体験だ。
そして、その小さな成功体験を積み重ねて旅を終えた時、「旅という非日常を私ひとりで作り上げられるのだから、大抵のことは大丈夫か」と思える。

社会に出て一丁前に年齢を重ねていく自分。
仕事では中堅に差し掛かるし、プライベートでもお付き合いや結婚を意識する年頃。
そんな自分がこのままで大丈夫だろうかと不安になった時、自信を取り戻すための記憶や御守りとでも言おうか。

今は以前と違って、旅先の写真を見返しては、この時は台風に見舞われつつもよくぞ山奥まで行ったな、とか、お土産物屋さんのおばちゃんと仲良くなってサービスしてもらったな、と鮮明に思い出せる。

同時に、旅を通して今の自分に出来ないことも知る。
私の場合は、車の運転。絶景を楽しみに旅先を決める私にとって、秘境と言われる場所は地方の山間が多く、どうしても交通便が悪い。この2年間、そのおかげで四国一周を諦めた。
なので、今年の目標は車を運転できるようになって、行動範囲を広げること。これに尽きる。
よし、今年も楽しみになってきたぞ。