私は結婚を機に退職をした。旦那となる人が転勤になったからだ。
しかし半年ほどで彼が転職を決め、再度地元に帰ってきた。
仕事をどうしようかと悩みながら私はパートを掛け持っていた。

そんな時、元々働いていた職場の同期から、「繁忙期になり人手が足りないから手伝いにきてくれないか」と声をかけてもらった。
仕事の勝手もわかるため、パートで少しずつ元の職場に出勤するようになった。
そして、本格的な繁忙期に突入し、出勤頻度も高まっていたところで、社員として復職しないかとの提案をもらった。

結婚したら子供が欲しかった私は悩んだ末、「働きやすい」元職場に復職することを決めた

私は結婚したら子供が欲しかった。ただ、家計的に私たちは夫婦共働きでなければならなかった。どこかで社員として働かないといけないなぁ、と私は就職サイトを毎日見ていたところだった。
仕事が嫌で嫌で退職をしたわけではなかったし、不満に思うことももちろんあるが、それはどんな職場にだって付き物だろうという考えだった私は、悩んだ。
子供を授かると職場には迷惑をかけることになるかもしれない、産後に職場復帰をしても子育てをしながらの勤務でまた迷惑をかけることになるかもしれない。
でも、元々働いていた職場なら人間関係もできているから、相談もしやすいし、ちょっとした無理も言いやすい。
ただ、育休産休の実績がほとんどなく、デスクワークではなくサービス業であったため、身籠もったあとも働けるかどうかという不安があった。また給与面ではお世辞にもいいとは言えなかったため、悩んだ。

悩んだ末に、私は復職することを決めた。「働きやすさ」を選んだのだ。
そして、1年間働いたあと、子供を授かることができた。嬉しかった。
私が産休に入る時期はちょうど繁忙期の終わり頃であった。私は大きなお腹で繁忙期を迎えなければならないのか、と一抹の不安を抱えた。

初めての妊娠で不安を抱えながら、変わりなく働いた。こんなに変わりなく働くものなのか

妊娠10週を迎えたあたりで職場に申し出た。「おめでとう!!」と祝福の声をかけてもらった。初めての妊娠で不安を抱えながらも、変わりなく働いた。
出勤時間を少しだけ遅めにしてもらうなどの譲歩はしてもらっていたが、変わりなく働いた。変わりなく、働いたのだ。

別に、妊娠したからえらいわけではない、気をつかってもらうことが当たり前でもない、そんなことはちゃんとわかっている、わかってはいる、のだが。
こんなにも、変わりなく働くものなのかと感じているのが正直なところだった。

お腹が大きくなり、どうにも動くのがしんどくなってきてからはもちろん少しは変わった。できるだけ激しい動きのないポジションにつけるようにしてもらっていた。
それでも、人が足りない、お客様が待っている、そんな場面を目の前に知らぬ振りはできない。どう考えてもきつい仕事を、産休に入る直前まで時折私はやっていた。
お客様から「大丈夫?」と声をかけられることも多かった。
同じ店舗のスタッフは「変わるよ!」と積極的に助けに来てくれていた。

「無理しないでね」言葉通りに受け取れなかった。働きやすい職場はどこかに存在するのか

ただ本部の社員の言葉が薄っぺらに聞こえて仕方なかった。
「無理しないでね」と何度も言われた。何を言っているのだろうと思った。どうしたら無理をしないですむのか、教えて欲しかった。だったらもっと現場に人をまわしてくれよと思った。だったら私を現場ではなく、その本部のデスクワークにまわしてくれよと思った。
最後まで「大丈夫?」「無理しないようにね」「いつもありがとう」と声をかけられ続けたが、助けられた記憶は一度もない。

「無理しないでね」がその言葉通りに受け取れなかった。無理をしては、毎日お腹の子供に謝っていた。生きにくい。生きにくい。なんて生きにくい世の中なんだ。
私はただ子供を授かっただけなのに。
おかしい、私は「働きやすさ」を選んで復職したはずだったのに。

他の会社だともっと働きにくかったのだろうか。これでも「働きやすい職場」だったのだろうか。私が望みすぎていたのだろうか。
心のどこかでモヤモヤしたまま産休、育休を終え、春から私は復職する。
もしも二人目を授かったときには、また同じモヤモヤを感じなければならないのだろうか。

私の思い描いている「働きやすい職場」はどこかに存在するのだろうか。
もしかするとこの日本には存在しないのかもしれない。