同じ毎日の繰り返し。カラフルだった世界は、あっという間にモノクロに

2020年。世界は大きく変わってしまった。
もうすぐ大学2年生になろうとする春だった。
世界的にウイルスが流行。大学にも行けない、友達にも会えない、バイトも出来ない。
ステイホームが掲げられ、世界から人が消えていった。
思い描いていたはずの明るいキャンパスライフは、家の中で画面を見つめるだけのオンライン授業に切り替わった。
唯一の楽しみはNetflixを見ることぐらい。
人に会える喜びは、全て画面の中へ吸い込まれていった。

起きて、ご飯を食べて、授業を受けて、Netflixを見て、寝る。
同じ毎日を繰り返した。
あんなにもカラフルだった世界は、あっという間にモノクロの世界へと変わってしまった。
私の世界をカラフルにしてくれていたものは、旅だった。

大好きだった旅は、してはいけないものに、悪へと変わってしまった。

四国へ。大人への一歩を踏み出したような、不思議な高揚感があった

初めての旅は大学1年生の夏休みだった。
それまでは修学旅行か家族旅行しか経験のなかった私が、初めて計画した旅だった。
飛行機を手配する、ホテルの予約を取る、日程を細かく決める。
大人への一歩を踏み出したような、不思議な高揚感があった。
そんな初めての旅の行先は四国。愛媛県と香川県。
東北に住む私にとって、とても遠い旅路だった。
どうして四国だったのか。
たまたまInstagramで見た瀬戸内海があまりにも美しくて、自分の目で見るために四国への旅を決めた。
親や友人に、四国へ行くという度に言われた。
「なんで四国?」
行きたいと思ったから、行く。
自分の気持ちにシンプルに従った。

東北から四国へ、飛行機を乗り継ぎ約5時間。
海外に行くような、壮大な道のりではなかったかもしれない。
それでも、確かにこれが私の初めての旅だった。

初めて来たはずだった。だけど、歩いていてどこか懐かしかった。

初めての四国旅は、私の心の中に深く残った。

着いた瞬間、はしゃいでしまって送迎バスの中にキャリーケースを忘れそうになった。
キラキラ光る、青い海に囲まれた島の中を散歩した。
強い日差しの中歩き回ったせいで、首元に真っ赤な日焼けの跡がついた。
うどんのコシが、普段食べているものと違いすぎて目を丸くした。
高速バスの駅を間違えて、3000円ムダになった。

自分が来たことのない土地に来たからこそ感じた美しさ。
自分が住んでいる場所では犯さないような間違い。
全部含めておもろくなってしまった。

旅をしている最中に感じたことがあった。
初めて来たはずなのに、どこか見たことのあるような風景を歩いている気持ちになったのだ。
フワフワ浮いた気持ちを抱え、歩いていた時に気付いた。
「ああ、これが旅なんだ」

初めての旅から2年以上が経とうとしている。
旅に出られない世の中になってわかったことがある。
人は旅をしなくても生きていけるし、楽しいことは他にも沢山存在している。
相変わらずNetflixはおもしろいし、続きが待ち遠しい漫画がある。
旅に出なくても、楽しむ方法は案外身近に転がっているものなのだ。

それでも、私はいずれまた旅に出るだろう。
見たことのない風景、人、食べ物。
まだ出会わなければいけないものが、この世には星の数ほど存在しているから。
見たことのないものに出会って、見たことがあるような景色の中をまた歩く。
そしてきっと、こう思うんだろう。
「ああ、これが旅なんだ」

どうやら私には、旅が必要みたいだ。