「女性は恋をすると綺麗になる」
という言葉に、苦しめられている女性を、私は何人も知っています。
そして私もその中の一人です。
俳優になるには、恋愛が必要。何度も言われる言葉に使命感を駆られた
私は女優を目指すために地方から上京してきました。
慣れない都会での生活の中、俳優という「人に見られる」職業を目指すにあたって、必ずと言っていいほど言われるのが、
「いい芝居をしたければまず、恋愛をしなさい」
「女優は男を落としてなんぼだ」
10代で上京したてのころはみんなこういう言葉も素直に受け止め、「恋愛しなきゃ」と使命感に駆られるような気持ちでいました。だってみんな本気で俳優になりたいと思っていますし、たしかに女優は魅力的なほうがいい。それはわかっていたからです。
わたしたちはまだ若くて未熟で、経験も実力もない。そんなときに頼れるのは、やはり教えてくれる先生や先輩の言葉だけでした。
ある子は、自分が伸び悩んでいることを男性の先生に相談したところ、この答えが帰ってきたそうです。
その子はまだ恋愛経験も少なく、特に今は夢を追いかける方を頑張りたくて、積極的に恋愛をしようとは思えない、とのことでした。恋愛はデリケートでプライベートな問題です。そこに土足で踏み込んでこられたような気分になったと言っていました。
わたしはそれを聞いて悲しくてたまらなくなりました。
大切な友達が、傷つけられるのは辛いことです。
いくら女優という夢を叶えるための助言とはいえ、あまりに失礼だし不適切だと思いました。
実際その説を唱えるのは、全く関係のない男性という事実
そうして思い返してみると、私自身も「男性に」そういう助言をされてきたことを思い出しました。
もしそれを言う人が女性で、実際に自身が恋愛を経験することによって女優への道も開けていったという体験に基づいたものでしたらまだ理解はできます。
ですが、実際その説を唱えるのは全く関係のない男性。
私は20代になってその事実に気づき、芸の肥やしの為に無理に恋愛しようという考えは辞めることにしました。
だってとても恐ろしいです。
あまりにその観念に囚われた子がいて、もしその子が焦るあまりに好きでもない男性に処女を捧げてしまったとしたら……。
女性にとって体の交わりは、ときに傷となることもあります。
それは女性の身体にとってもだし、精神的にも男性より女性のほうが重く受け止めている人のほうが多いと思います。
きっと、そのような助言をする男性には、この重みがわかっていないんだと思います。
恋愛だけが全てではない。自分を信じられる若者が増えますように
仮に恋愛経験を積んで、綺麗になって、魅力的な女優になれたとしても、その心のなかに癒えない傷があるとしたら、それは幸せと言えるでしょうか。
助言した男性はそこまでの責任を負えるのでしょうか。
負えないのです。結局女性は自分で自分の身を守るしかないのです。
そもそも、恋愛をしたからって必ずしも見た目が綺麗になったり雰囲気が変わったりするわけではないと思います。
男性の無責任な発言を鵜呑みにしてしまう女性が増えないでほしいと思いますし、男性もしっかり学んで、自分なりに考えてみてほしいです。
女性も、男性も、恋愛だけが全てではありません。人の魅力というのはその一面だけではなく、多面性があり可能性に満ちています。
どうか自分のことをもっと信じられる若者が増えますように。
自分だけの魅力を見つけ出して、それを磨いていく人生を送れるように私も頑張っていきます。