私は弱いと思っていた。
自分で解決出来ないから。自分を強く持てないから。
何事も自分で決められて、人に流されず自分の思うように進むことが憧れで。そんな私に誰かを頼る選択肢なんてなかった。
悩みを抱えて苦しんだ時は1人で泣きじゃくって押し殺した。
重いものを運ぶ時はフルパワーを出して1人で運びきった。
それで良かった。弱い自分を見せたくなかった。
昔からずっと、そうだった。

思春期の真っ只中、私は高校生になった。
中高一貫校に高校から飛び込んで行った。
不思議と居心地は良かった。
でも、拭えない孤独があった。
あの子たちが語る過去の話がわからない。
あの子たちが手を振る過去の担任がわからない。
話に、入れない。
決して仲間外れにされていたわけじゃない。
それでも感じてしまう疎外感。
止まることのない新しい生活。
私は知らず知らずのうちにストレスを抱え込んでいたのだと思う。

抱え込んだストレス。弱い私を自由に曝け出せるのはSNSだった

私には中学の頃からのめり込んでいたSNSがあった。
そこでは趣味の合う人たちと語り合えるし、まだ出会ったことのない色んな人と出会える。
現実では弱いだけの私も、そこにいる時だけは自由だった。弱い私だってさらけ出せた。
私はそこに縋りついた。
「辛い。どうにかしたいのに、どうすればいいかわからない。たすけて」
泣きながら、震える指で文字を打っていた。
誰か、たすけて、誰か…誰か……!
とうに1人じゃ抱えられなくなっていたものをどうにか軽くしたくて、見知らぬ誰かを頼ろうとした。

しばらくして、SNSに届いた1通のメッセージ。
「どうしたの?話聞こうか?」
そう、返してくれたその人に、私は心の内をぶちまけた。
文字だけだったから上手く伝わっていたかはわからない。
でもその人はずっと真剣に聞いてくれた。
寄り添いながらひとつずつ一緒に考えてくれた。
それまであまり話したこともない人だった。もちろん会ったこともない。知っているのはSNS上の名前くらい。
それでもその人の言葉は私の重い荷物を下ろしてくれた。
人に頼ることができないと言った私に、「頼っていいんだよ。頼ると依存は違うから。頼ることは悪じゃない」と言ってくれた。
それからの私に"人を頼る"という選択肢を示してくれた。
人に悩みを話したことがなかった私が、初めて人に思いを伝えることが出来た。

困ったら人に頼る。顔も名前も知らない人の助言で始まった私の人生

私はその人の言ってくれたように、困ったら人に頼ることを目標にして過ごすようになった。
そうすると、過去の話に入れなくても今の話に入れるようになった。
過去の話もひとつずつ聞けるようになった。
ちゃんと向き合えなかったあの子たちと向き合えるようになった。
私の人生はだいぶ生きやすくなったように思う。
悩みを人に打ち明け、できないことを抱えず人に頼るだけで少し強くなれた気がする。

見知らぬ人に助けを求めても相手にしてもらえなかったかもしれないし、気付いてもらえなかったかもしれない。
私は運が良かったのだと思う。
神様がくれた運にも感謝しなければならない。
でもそれよりも1番。
あの時私の話を聞いてくれた顔も名前も知らない人へ。
私を頼らせてくれてありがとうございました。
私は人を頼ることをちゃんと覚え、今日も元気に生きています。