私には、どうしようもない友人がいました。

友人に対してこんなことを言うのは自分でもどうかと思うのですが、とにかく「どうしようもない」以外の表現が見当たらない子だったのです。

いつも一緒にいたAは、試すような言動をよくする面倒くさい人

さて、その子の名前をAとして少し語らせていただきますと、Aは私の中高のときのお友達です。クラスが同じになったことはなかったものの、あるとき意気投合して、中学2年生から高校3年生で卒業するまで毎日お弁当を一緒に食べて、たくさん出かけて、たまには校則を破って買い食いしたり、たくさんのことを一緒にしてきた子なわけです。
しかしこれが割と、というかかなり面倒くさい人で、私を試すような言動をよくする女の子でした。

具体的に言うと、たとえば何かあったときそれが最悪な状況になるまで私には一切言いません。私のことを大事だ親友だというくせに、です。
最悪な状況になって初めて私を訪ねてきて、そして最後には決まったように私を試すための「ごめん、嫌わないで」を言うのです。そのくせそんなに仲の良くない子にはさらっと話していたり、もうとにかくなんというか、不安定な子でした。
そんなことがもう何回も続いて、その度に「嫌わないけどそういうのは早めに言ってほしい」と返し解決策を一緒に考えてきた私も悪いのでしょうが、でもその度に私はちょっとずつ傷ついていたのだと思います。

私への配慮が日に日に薄くなる彼女との友情に起きた、決定的な出来事

Aは大学進学を機に遠くの県に引っ越したのですが、それからも交流は当然のように続いていて、しかし彼女の私に対する心の配慮というか、優しさみたいなものが前よりも薄くなったのです。
離れたので当たり前と言えば当たり前なのですが、なんと言えばいいのか、その薄さは友達として最低限守られるべきだと思われるラインを越えた優しさの欠如だったとでも言いましょうか、とにかく「この子は何をしても私を許してくれるだろう」というのがますます透けて見えるようになったのです。
私は別に彼女以外に友達がいない訳ではないし、そのことについて四六時中悩んでいたわけでもないのですが、でもやっぱりその時も傷ついていたのだと思います。

そしてあるとき、決定的な出来事が起こります。仔細は伏せますが、どう考えても事が起きたときに私に報告して、何なら謝ってもよかったぐらいのことを彼女はいつものように報告しなかったのです。
それなのに昨日の夕飯の話題かなんかかと思うほどさらっと報告。あまりの仕打ちに私は電話していた携帯を投げて、泣いて、叫んで、思いつく限りの罵詈雑言をAに浴びせました。
なのにAは「なんでそんなに怒ってるの?」と言い出す始末で、なんでこんな思いをしなくちゃいけないんだ、私が全部悪いのか、縁を切った方がいいか、と感情がぐるぐる回ってしまってどうしようもなくなったのです。

この選択は不誠実じゃない。自分に誠実であるために必要なんだ

とても恥ずかしいことだけれど、どうしても誰かにこの気持ちを受け止めてほしくて、私は中学高校時代にもう一人特別仲が良かったBに話をすることにしました。
Bは一連の話を聴いた後、
「貴女は優しいからAと縁を切ったらすごく不誠実なように思うのかもしれないけど、でもそれは違うんだよ」
と私に言ってくれました。私の中でいちばん引っかかっていた部分をほぐしてくれたのです。
実際私はAを嫌いだと思ったことはありません。一緒にいるときは本当に楽しくて、たくさんの思い出を2人で作りましたし、それらは今でも忘れていません。いつもよりちょっと高いランチを食べるときにすごく緊張したこととか、そんな小さなことも。
でも色々積み重なってしまった私の心はもう限界で、自分を守るためにAと縁を切ることは自分に誠実であるために必要なのだとBは言ってくれました。
そのとき私がどれだけ救われたかを言葉にすることはとても難しく、しかしAと連絡を取らなくなった私は今、とても心が自由なのです。