「まよはツン9、デレ1のツンデレだな。たまにはもっとデレてよ」
付き合い始めて4年目。正確に言えば3年10か月と27日。こんなセリフを彼から何度言われたことだろう。

確かに私はあんまりベタベタと甘えることはしない。だから、デートにでかけて、カップル専用のいかにもラブラブなフォトスポットがあっても、「あんなのの前で写真を撮ったら運営の思うつぼだから嫌だ」と拒否する。
または、旅行などに行った際、彼に「またいつかここに来たいね~」などと言われても、「そのときまで付き合っているか分かんないけどね」と憎まれ口をたたいてしまう。
「なんでそんなこと言うの~」としょんぼりとした彼を見てニヤニヤするのだ。元来意地が悪く、あまのじゃくなのである。

彼と付き合ってから毎年、バレンタインにはスイーツを渡した

そんな私も毎年、バレンタインは自分なりのデレを見せている(はずだ)。
付き合ってから初めてのバレンタインは、彼の一番好きなショートケーキをホールで作った。私は料理やスイーツ作りはするが、盛り付けが壊滅的に下手くそだ。
しかしその時は、デコレーションが上手くいき、自分でも驚いた。もっと驚いたことは、彼がその場で「うめえうめえ」と言いつつ、2~4人前の4号のホールケーキを、1人でペロリと平らげたことだった。てっきり、お父さんとお母さんと分けて食べるのだと思っていたのに。

2年目のバレンタインは、私の就活と被った。そのため、スイーツを手作りする余裕はなく、代わりにTopsのチョコレートケーキを購入した。就活で忙殺されていたせいか、この時期のことは正直記憶にないことが多い。
しかし、「手作りじゃなくてごめんね」と謝る私に、「俺このケーキ大好きなんだよね」とまたもや「うめえうめえ」と言いながら、まるで飲みこまれるように一瞬でケーキが消えたことは覚えている。

3年目は、ガトーショコラとチョコムースプリンを手作りした。が、この年は肝心のスイーツより添えるメッセージに力を込めた。「うめえうめえ」と食べ終えた彼に、「メッセージを読んでみて」と言う。そこにはこう書いてある……。

「バレンタインだからって、私がメッセージで可愛くデレるとでも思ったか?考えが甘い、甘すぎる。ガトーショコラに入れた大量のグラニュー糖より甘い」

某お笑い芸人の昔のネタのようなメッセージ。笑い上戸な彼は「ひぃ~ひっひ」と、餅がのどにつまった仙人のような声を出して、腹を抱えて笑い転げた。

「恋愛3年賞味期限」という説があるのをご存じだろうか?

そして、4年目の今年である。
皆さんは恋愛3年賞味期限説というものをご存じだろうか。恋愛感情を持った際に脳内に分泌されるドーパミンという神経伝達物質がある。これは快感や多幸感を得る働きがあるが、厄介なことにドーパミンの分泌は長くは続かない。これが恋愛感情は3年をめどに目減りしていく、という、この説の根拠である。

私はもともとお調子者で、自分にとって都合のいいことしか耳に入ってこないタチだ。だからおみくじを引いても、大吉の、しかも自分にとってハッピーなことが書いてある時しか信じない。
星座占いをしても、ふたご座の適職診断で文筆業全般、などと書いてあると、「ほらやっぱり私は文章で生きていく宿命なのね」と1人でニヤける。ふたご座の基本的性格が多芸多才である、という自分とは真逆な点をガン無視して。喉元過ぎれば熱さを忘れる調子の良いやつなのである。

今年のバレンタインは、2人でバスクチーズケーキを作った

そんな調子の良い私もこの1年、恋愛3年賞味期限説が頭の片隅にあった。基本的には彼との未来を信じつつも、「3年間も付き合っていたら、もしかしたら飽きられているかも」と不安に思う気持ちがときたまあった。
「毎年同じことをしたら、マンネリ化しそうだし、今年は手法を変えてみるか」と思い、4年目の今年のバレンタインは、私が一方的にスイーツを作るのではなく、一緒に作らないかと提案した。
料理が好きな彼は「なにそれ面白そう」と目をキラキラさせ快諾した。

そして、作ったのがバスクチーズケーキである。
2人でああでもないこうでもない、と言いながら作った。そして、今度は2人で「うめえうめえ」。なぜか、1人で作るそれよりも、2人で作るそれの方が「うめえ」気がした。

相手のことに思いを馳せつつ、1人で作るバレンタインももちろん良い。でも、2人で一緒に1つのものを作り上げていくバレンタインもこれまた幸せの形の1つな気がする。
愛だの恋だというと、恥ずかしくてどこかくすぐったくなる。しかし、愛の数だけ、恋の数だけ、人の数だけ、様々なバレンタインの形があって良い気がするのだ。
「毎回おんなじことをしても飽きちゃうしさあ、今年一緒に作って一緒に食べない?私食べたいのあるし」
こんなセリフで、「これから迎える5年目の日々も、こんな風に一緒に作り上げていきたい」と表現したつもりの私は、やはりツンデレな部類に入ってくるのだろうか。
こんなことあいつに言ったら絶対に調子に乗るから、絶対に言ってやんない。だてにこっちだって、長年ツンデレやっているわけではないのだから。