「あなたが学生時代に力を入れたことは何ですか?」
就活で、必ずと言っていいほど聞かれるこの質問。いわゆる「学チカ」である。
「バイト」や「サークル」など様々あるが、ちょっと恥ずかしくて面接官に言えなかった私の「学チカ」がひとつある。それが「貯金」だ。

満腹にならなくても平気。留学を目指して節約生活開始

私が貯金を頑張っていたのには理由がある。交換留学をするためだ。
交換留学では、自分が在籍している大学に学費を納めていれば留学先の大学の学費は払わなくてよい。とはいえ、寮や保険の費用は払わなければいけない。
しかも1年近くの長期留学。計算が苦手な私だが、とりあえずかなりの額が必要だということは分かった。

そこで私の節約生活は大学1年生のときから始まる。
実家暮らしの特権を使って昼食はお弁当を作ってもらう。大学の食堂でお弁当を食べるのは申し訳ないから、図書館の飲食OKなスペースで一人きりで食べる。
お弁当を作ってもらえない日は朝早くスーパーに寄って、当日の午前11時に消費期限を迎える半額のおにぎり1個を昼食用にゲット。
満腹にはならないけど、全然平気。だって留学行きたいし。
お小遣いは月にたったの1000円なのに、友達と遊びに行けばプリクラで1200円使っていた中学生の私が見たらびっくりするだろう。なんであのとき1日に3回もプリクラなんて撮ってたんだろう。

全部留学のために我慢したのに、たった一通のメールで留学は中止

こうして節約を頑張り(コピー代すら渋る)、バイトもほどほどに頑張り(賃上げ交渉は失敗)、英語の勉強も頑張り(IELTSの問題集はもちろん大学の図書館で借りた)、晴れてアメリカの大学に留学できることが決まった。はずだった。

私の目の前に突如立ちはだかったのが、コロナだ。コロナの影響で留学が中止になってしまった。
あんなに必死に準備したのに、中止を告げる一通のメールで終わってしまうなんて。

あの日々は何だったんだろう?消費期限切れのおにぎりを食べていた日々は?友人と行ったお洒落なカフェで本当は1500円のパフェ食べたかったのに、渋って1000円のカレー食べたのは?短期留学したかったけど、「来年は交換留学できるから」って我慢したのは?
全部留学のためだった。やりたいことのためにお金を貯めていたのに、その「やりたいこと」が消えてしまった。
別に一夜にしてお金を失ったわけではない。寧ろ手元にちゃんとお金はあるのだ。だって頑張って貯金していたから。
でもこんなに虚しい。ああ、こんなことなら期間限定パフェ食べときゃよかった。

モチベーションを上げるため、留学中止のプラス側面を必死に探した

でも、いつまでも落ち込んでいるわけにはいかない。
留学した場合、ゆっくり就活をして5年かけて卒業するつもりだった。しかし、留学が立ち消えになったため4年で卒業することになり、突如就活を始めなければならなくなったからである。
少しでも日々のモチベーションを上げなければ。私は留学に行けなくなったことによるプラスの側面を必死に探した。

そうだ、もう節約をする必要がないんだ。何よりも先に頭に浮かんだのが、そのことだった。
別に半額のおにぎりを食べるのも嫌いだったわけではない。なんなら食品ロス削減に貢献出来ていて、ちょっと嬉しく思ってすらいた。
でもあの頃の私は留学のこと、つまり自分のことばかり考えていた。正直なところ、人にお金を使う余裕がなかった。金銭的な余裕というより、精神的な余裕が。お金は貯めなきゃいけないもので、無駄使いしてはいけないと自分の頭に刷り込ませていた。

相手のことを考えてお金を使うのは、自分もちょっと幸せにしてくれる

でも、もう使っても大丈夫。自分のためだけではなく、人のためにもお金を使っていいんだ。そう思うと心に余裕が出てきた。
家族にお土産を買って帰ることが増えた。家族みんながお気に入りのクレープ、たまたま見つけたパン屋さんのパン、大ぶりの餃子。何か買って帰ると、家族は必ず喜んでくれた。
人のためにお金を使うのって楽しいことなんだ。小さいけれど大きな発見だった。

もちろん今でも貯金を続けている。新社会人、何かとお金がかかる。
でも、何を選んだら喜んでくれるかと相手のことを考えてお金を使うのは、自分のこともちょっと幸せにしてくれるのだと学べた今、貯金も消費もどっちも大事だと分かる。
……なんてこと、面接官に言っても怪訝そうな顔されて終わるんだろうな。今度はプリンでも買って帰ろう。