「お金は最低限あればいい、多ければ多い方がいいけれど」
そんな風に考えていたこともあった。数年前、転職活動中の私がそうだったのだけれど。
そんな私は今、人生史上最高に“お金がない”ことに悩んでいる。

結婚を機に上京し転職。給料は下がっても、大丈夫だと考えていた

新卒で入社した会社は、田舎にしては高月給できちんと昇給もある良い会社だったと思う。しかし、社内の独特のルールだったり、残業が当たり前である雰囲気であったり、不満はあった。そんな折、結婚を機に上京することとなり、転職することとなった。
転職活動を始めて半年ほど、多少妥協するようにして新しい職場を決めた。前職とは異なる職種で、給料は少し低くなってしまったが、ライフワークバランスを重視していた私は「最低限の生活はできるはずだし、昇給も見込めるらしいから大丈夫」と考えていた。

あれから3年ほど経つが、あの頃の私に会えるなら「大丈夫じゃないから!昇給なんて無いに等しいよ!もっと早く、何か手を打って!」と言ってやりたい。
そう、大丈夫じゃなかったのだ。

前職勤務中は、実家暮らしだったこともあり、それなりに安定して貯金していたと思う。しかし、上京のための引っ越し資金・新しい家電の購入で、貯金の半分以上は使ってしまった。無給期間は1カ月ほどで済んだが、その間も普通に生活はするわけで、貯金を切り崩さざるを得なかった。
また、今振り返ると、前職勤務中は「貯金できていた」といえども、遠距離恋愛中かつ趣味が観劇だったため、月に一度は東京に通う生活をしていた。その交通費や宿泊費を考えると、必要経費といえども「もっと貯金できたのでは」と思ってしまう。

実家暮らしより高い生活費、結婚式の出費で、貯金が殆ど底をついた

新しい職場での勤務が始まり、月に一度給料が振り込まれるようになった。「やっと貯金を増やせる」と安心したのも束の間で、思うように貯金はできなかった。
原因の一つは、生活費だった。生活費は夫と折半しているものの、実家暮らしの時の倍以上支払う必要があった。今思うと実家暮らしの有難さが身に染みる。
また、今まで通り趣味への出費を惜しまなかった。いや、惜しむなんてできなかった、というのが正しい。

極め付けに昨年、結婚式という大きなイベントがあった。大きな出費になることは分かっていたが、思うように貯金できないうちに開催となってしまい、ここで私の貯金は殆ど底をついてしまった。
その上、結婚式前から新たな趣味が増えてしまい、出費が増えてしまった。結果的に、現在もまとまった貯金はできてない。

こんな状況で、こんなことを言うのは滑稽だが、「私はお金にだらしない方ではない」と思っている。倹約家という訳でもないが、衝動買いはせずきちんと考えて物は買うし、食料の買い出しでは無駄のないよう計画的に、より安いものを選んで購入している。
また、使えるクーポン等は積極的に使っているし、家計簿もきちんとつけている。趣味に関する出費でも、盲目的に大量購入することは決してない。

人生初のお金がない状況。お金がないというのは、こんなにつらいのか

「あぁ、お金がないというのは、こんなにつらいのか」
安定した職業の両親を持つ私は、所謂“恵まれた家庭”で育ったと思う。その証拠に、幼い頃お金に困ったような記憶はないし、やりたいといったことに対して、お金を理由に断られることはなかった。
そんな私が今、「お金がない」と悩んでいる。実に滑稽で、惨めだ。

「いっそ、全部趣味も辞めて貯金を優先すればいいじゃないか」という声もあるだろう。しかし、私にとって趣味は生活の一部で、なくてはならないもの、生きる上で欠かせないものだ。
今でさえ厳選して出費を抑えているのに、これ以上切り詰める必要があるのか、と考えると、なんだか悲しいような、惨めな気持ちになってくる。

貯金上手な夫に「今使う1万円より、10年後、それを投資して増えた1万円を使う方が、コスパが良いと思っている。だから、今はお金を使わずに貯めている」という旨の話をされたことがある。
なるほど、と感心すると同時に、私はその考えに共感はできないと思った。

今しか得られないもののために今、お金を使いたい

私は、今しか得られないもののために、今、お金を使いたいのだ。

例えば、私の趣味の観劇は、同じ場所、同じメンバーの同じ演目だとしても、一つとして同じ公演はない。その日見る私たち観客のコンディションによって、別の観劇体験になると思っている。
もし数年後、同じ演目を同じメンバーでやるとしても、数年後では演者のスキルや経験値、観客の受け取り方は、全く違うものになるはずだ。それらは、演劇だけでなく、ライブやイベント等も同じだ。

他の趣味、例えば洋服やコスメだってそうだろう。いつか再販されるかもしれない、中古品が手に入るかもしれない。
でもそうじゃない。今この時を、この品と共に過ごしたいから、買い求めるのだと思う。

そうは言っても、「お金がない」という事実は変わらない。今後、どうやって出費を抑えるか、またはどうやって収入を増やすか、そんなことをずっと考えている。人はこんな私を滑稽だと笑うかもしれない、かわいそうな人だと思うかもしれない。
もう、それでもいい。いつかお金の心配をしなくていいように、うまくやってみせる。私らしく生きるために。