「大人になったら」これが私の口癖。現在22歳。社会的にはもう立派な大人である。
それでも、私はいまだに自分のことを子供だと思い続けている。お酒が飲めるようになっても、振袖を着ても。
小学生の私から20歳の私へ宛てた手紙を、ついに開けることにした
成人式の時、小学校時代の友達から手紙が送られてきた。中に入っていたのは当時一緒に書いた、「20歳の私へ」という手紙だった。
封筒に書かれた、大きくて自信に満ち溢れた小学生の私が書いた文字。今の私の字はなんだかこじんまりして、吹いたら飛ばされそうなほど弱弱しいものだというのに。
あのとき思い描いていた大人の私と今の私。当時の自分の期待を裏切ってしまうのが怖くて、手紙を開くことはできなかった。
22歳の誕生日、思い切ってこの手紙を開けることにした。
小学生の私が大切にしていたキラキラのシールをゆっくりとはがし、中身を取り出す。きらびやかな封筒とは裏腹に、中身は質素なコピー用紙だった。
大きな紙一面に広がる大人への期待、希望。なんだか後ろめたい気持ちと共にそっと文章に目をやる。
「20さいのわたしへげんきにしていますか。まんが家にはなれましたか!?ゆうすけとはどうなった?うまくやっていますか?べんきょうたくさんしてください。しあわせになっていたらうれしいです」
描いた理想との差に落ち込むかもと思ったけど、大人の自分、悪くない
なんだか笑ってしまった。ちなみに祐介君は初恋の人の名前で、残念ながらうまくはやっていない。祐介君どころか私にはしばらく恋人もいないし、あまり恋をしたいとも思っていないのが現実である。
それでも、恋に憧れた小学生時代から、約十年の歳月を経て、「恋をしなくても十分幸せ」という結論に辿り着いた自分が誇らしく思えた。
当時の夢は漫画家。中学生になって、運動部に入ったらあまりの忙しさに絵を描くこともなくなってしまったが、それでも漫画は読み続けていた。
22歳、絶賛就活中の私が目指す職業は漫画の編集者である。
勉強もまあそこそこ頑張って、高校も県内一の進学校に合格したし、浪人はしたものの東京の国立大学に合格した。あの頃の私の理想はよくわからないけれど、自分自身この進路には満足している。
すぅ、と大きく息を吸った。
キラキラした夢のような理想に打ちのめされるかと思っていた。22歳になった自分、案外変わってないじゃん。大人になった自分、悪くないじゃん。
毎日一生懸命で、後ろを振り返っている暇なんてなかったけれど、思った以上に私は、自分の信じた方向にまっすぐ歩いてきたのかもしれない。そう考えたら、今までの頑張ってきた自分を抱きしめたくなった。
今の私は過去の私の上に生きているのだ、それは、この手紙を書いた無垢な自分も含めて。
傷つけられると思っていた手紙に、なんだか勇気をもらってしまった
手紙を封筒に戻し、もう一度丁寧に封をした。傷つけられると思っていた手紙に、なんだか勇気をもらってしまった。顔を上げると、鏡に映った自分の顔は自然と明るいものに見えた。
これからも成長していく私へ。
元気にしていますか。やっぱり私はまだ自分のことを大人だとは思えません。お酒を飲んでも、振袖を着ても。大人っていつなれるのかな。30歳、40歳、それとも死ぬ間際でしょうか。
いろんなことをたくさん経験してください。私は、いつか出会うあなたのために、今を精一杯生きてみようと思います。
真っすぐ、ひたむきに、ね。そしていつか、素敵な大人になりたいと思います。大きな希望をもって。