1本の映画の衝撃。「100万円貯めてみたい」と思った

高校生の頃、一度に手にしたお金の最高額はおそらく5万円以下だったと思う。
自販機のジュースは体育を頑張ったご褒美。部活動の決起集会には500円の購買のカツ丼。学割で800円のパフェは、何枚も写真を撮ってありがたく食べた。

そんな10代の頃。ある映画を観て、初めて100万円を意識した。
友達とのお泊まり会で観た「百万円と苦虫女」。ある事がきっかけで生まれ育った街を出た主人公が、100万円が貯まるまで働き、貯まったら次の街に引っ越す、という内容だ。
衝撃だった。自分と同じくらいの年齢の主人公が、そんな大金を稼ぐ事ができるなんて(しかも知らない街で一人暮らしをしながら!)。

元々お金が好きで、映画と出会う少し前から500円貯金をしていた。もっと遡れば小学生の頃、半紙に"金銭感覚"と書いて部屋に飾っていた。確か好きな言葉を書いていいという授業で、他の子は友情とか努力とか書いていた。

映画を観て数ヶ月経つと私は大学生になり、バイトを始めた。初めての給料は7万円くらいだった。祖父母にお寿司をご馳走した。服やコスメやお菓子を買ってそれなりに満足した。
お金を使うのは楽しいけれど、働くのはそれなりにしんどい。消費よりも貯金にウェイトが偏って行った。漠然とだが「100万円貯めてみたいな」と思っていた。

大学に行きながらのアルバイト。労働への怒りはお金を得て昇華させた

バイトを始めてすぐに、「労働はクソだ」と某アニメキャラと同じ持論を練り上げた。
大学の授業を5コマ受けてからのバイトはきつい。週5で学校に通ってさらに土日もシフトに入るとなるとさらにきつい。大学生前半戦。労働への怒りはシフト希望を減らすことで鎮火することにした。
シフトを減らせば当然収入も減る。バイト代が月に5万円を下回る月も出てきた。貯金の額もなかなか上がらなかった。
その代わり、少ないながらも回数を重ねるうち、仕事には慣れてきた。働くほど労働への怒りがメラメラと燃えた。大学生後半戦。怒りはシフトを増やしてお金を得ることに昇華できるようになった。

バイト!買い物!バイト!100万円!
元々あまりお金を使わない方だったから、それなりに買い物をしても給料の何割かは貯金に回せた。毎月通帳の残高が増えていくのがたまらなく嬉しかった。趣味は記帳と貯金といっても過言ではなかった。
あと何ヶ月で貯金が100万円に到達するか、給料の何割までは使っても貯金に響かないか、そればかり考えていた。
あの映画の主人公になった気分だ。生い立ちや生活は全くもって違うけれど。

ついに到達した貯金額100万円。小さな目標を達成して得られた自信

大学生最後の年。ついに貯金額が100万円に到達した。70万円を超えた辺りからはもう、100万円の事ばかり考えていた。それしか考えられなかった。
"百万円と苦虫女"に出会ったその日から、ずっと夢見ていた100万円の印字。私なりのペースで手に入れた。

私と映画と100万円。100万円貯まっても、映画の主人公みたいに引っ越したりはしないけど、自信が持てる。小さな目標なら達成できる。
貯まったらあとは自由。100万円あったら、なんでも買える気がするから。愛しい私の100万円。